IBMが業種別パブリッククラウドを強化へ オンプレ時代からの戦略は生きるのか:Weekly Memo
IBMがパブリッククラウドサービスの業種別展開に注力している。金融向けからスタートし、通信、医療、行政向けへと広げていく計画だ。狙いは何か。パブリッッククラウド市場の「ゲームチェンジ」をもくろんでいるようだ。
IBMが2021年4月7日(米国時間)、金融向けのパブリッククラウドサービス「IBM Cloud Financial Services」の強化を発表した。コンテナ基盤「Red Hat OpenShift」などのクラウドネイティブな機能をサポートするとともに、パートナー企業としてSAPが加わったのがポイントだ。
IBMは2019年にBank of Americaの協力を得てIBM Cloud Financial Servicesを公開して以来、強化を図っており、今回の動きもその一環だ。さらに、同社は金融向けを皮切りに「インダストリーパブリッククラウド」(以下、業種別パブリッククラウド)の展開に注力する方針を打ち出した。
日本IBMが2021年3月2日にオンラインで開いたクラウドプラットフォーム事業についての記者説明会では、同社の今野智宏氏(執行役員テクノロジー事業本部クラウド・プラットフォーム事業部長)が、「当社のパブリッククラウドである『IBM Cloud』は2021年、業種別展開にフォーカスしていく」と強調した。
その際、今野氏が金融向けパブリッククラウドの概要として示したのが、図1だ。ポイントは「金融業界特有のセキュリティとコンプライアンス要件に対応している」ことだ。
金融向けを皮切りに全業種へ IBMが明かした方針の中身
実は、筆者はIBMが2019年にIBM Cloud Financial Servicesを公開した当初から、同社がパブリッククラウドサービスを業種別に展開していくのではないかと見て、日本IBMの山口明夫氏(代表取締役社長)に会見などの際に質問してきた。しかし、2020年までは明確な回答がなく、ベールに包まれている印象があった。
今回の会見で、今野氏は取り組みの内容を次のように明らかにした。
「金融向けを皮切りに、今後、業種別パブリッククラウドはまず規制の厳しい業種である通信、医療、行政などに展開し、その後、順次全ての業種に広げていく方針だ」
この発言のポイントは「順次、全ての業種に広げていく方針」と明言したことだ。2021年に入って米国本社が方針を固めたとみられる。
日本IBMが業種別パブリッククラウドサービスに注力しようとしているのはなぜか。同社および業界関係者の話をもとに、以下に筆者なりの考察を述べたい。
IBMが狙う、パブリッククラウド市場での「ゲームチェンジ」とは
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