メガパブリッククラウドとの“仁義なき戦い”に向けたIBM Cloudの勝算とは:Weekly Memo(1/2 ページ)
日本IBMがクラウドサービス「IBM Cloud」の機能強化を発表した。筆者が注目するのは、AWSやMicrosoftなどのメガパブリッククラウドと、どう違いを出していくのかだ。そこにはIBMなりの勝算もあるようだ。
IBM Cloud「第2世代」で実現した3つの強みとは
日本IBMは2020年8月28日、クラウドサービス「IBM Cloud」の機能強化を発表した。その概要については関連記事を参照いただくとして、本稿ではこの発表を機にIBM Cloudの基本的な戦略に注目したい。
オンライン形式での発表会見に登壇した日本IBMの田口光一氏(IBM Cloud Platform事業部長 理事)は、IBM Cloudの強みについて、「Enterprise Grade」「Secure & Compliant」「Cloud Services Anywhere」の3つを挙げ、それぞれの内容について図1に示した。その上で「今後の機能強化についてもこれらの内容に基づいて実施するのが、IBM Cloudの基本的な戦略だ」と強調した。
また、同氏は、IBM Cloudアーキテクチャの変遷について図2を示しながら説明した。筆者はIBM Cloudについてサービス開始時から取材してきたが、ブランドの変更も含めてこの10年間の変遷について、これだけコンパクトにまとめた図を目にしたのは、今回が初めてだ。こうした図が出てくるのは、IBM Cloudが大きな転機を迎えている表れと受け取れる。
図2で注目できるポイントは、下段に記されている「世代」の変遷だ。IBM社内で当初の2年程度を「第0世代」と呼んでいることも、筆者は初めて知った。IBMのクラウド事業が市場で認知されたのは、この後の「第1世代」からだ。IaaS(Infrastructure as a Service)に、買収したSoftLayer Technologiesのクラウドサービス「SoftLayer」を採用したことで、「『Amazon Web Services』(以下、AWS)やMicrosoftのパブリッククラウドに真っ向から勝負を挑んでいく」と、当時のクラウド事業責任者が意気込んでいたのをよく覚えている。
しかし、その後、AWSや「Microsoft Azure」(以下、Azure)、「Google Cloud Platform」(以下、GCP)の3つのサービスが「メガパブリッククラウド」と呼ばれるようになる一方、パブリッククラウド市場でのIBMの存在感は希薄になっていった印象がある。
そうした変遷の中で出てきたのが「第2世代」である。2019年に買収を完了したRed Hatのオープンな技術を取り込んだことが鍵になった。IBM Cloudは2019年前半からアーキテクチャを変え、IBMが持つ独自の各種プラットフォームやハイブリッド/マルチクラウド、エッジコンピューティングにも柔軟に対応する形となった。この第2世代のIBM Cloudが、先に述べた3つの強みを有しているのである。
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