加熱する「業種別クラウド」競争、セールスフォースの攻勢で浮かび上がってきた課題とは:Weekly Memo(1/2 ページ)
クラウドサービス市場で「業種別」のソリューションを展開する動きが活発になってきた。これに伴い、同市場の次なるステージに向けた顧客獲得競争が一層激化しそうだ。この動きを筆者なりに考察してみたい。
「これから『インダストリークラウド』に注力していきたい」
大手のクラウドサービスベンダーが今、こぞってこう発信している。「インダストリークラウド」とは、「業種別」ソリューションとして商品化されたクラウドサービスのことだ。本連載でもたびたび取り上げてきたテーマなので、言葉の整合性を図るため、本稿では「業種別クラウド」と呼ぶ。
冒頭で紹介した発言に象徴されるように、クラウドサービス市場では業種別クラウドを推進する動きが活発になってきている。この動きは果たして何を意味しているのか。そして、その行方はどうなるのか。筆者なりに考察してみたい。
「業種別クラウド」で攻勢をかけるセールスフォース
直近で業種別クラウド分野の取り組みを発表したベンダーの1社がセールスフォース・ドットコムだ。同社は2021年5月20日のオンラインで会見で、かねて展開してきた「Salesforce Industry 360」(以下、Industry 360)の新サービスを発表した。
Industry 360は、Salesforce.comが主力サービス「Salesforce CRM」をベースに顧客視点で必要な機能を組み合わせ、2018年から提供している「Salesforce Customer 360」(以下、Customer 360)を、業種別ソリューションに仕立てたサービスだ(図1)。
セールスフォース・ドットコムの今井早苗氏(常務執行役員 インダストリーズトランスフォーメーション事業本部)は図2を示しながら、「左から、医療、通信/メディア、金融のそれぞれの業界の顧客を中心に置いたCustomer 360が、Industry 360を構成している」と説明した。
Industry 360の特長について、今井氏は図3に示すように、「業界向けのNo.1 CRM」「最速で価値を実現」「柔軟性と拡張性に優れたプラットフォーム」「信頼できる唯一の情報源」「エコシステムとコミュニティーの支え」といった点を挙げた。
同氏は図4を示しながら「Salesforce CRMは各業界を代表する多くの企業に早くから利用いただいてきたが、これまでは個々に必要な機能を(ユーザー企業が)カスタマイズする必要があった。その手間をIndustry 360で改善した」と説明した。会見で説明があったIndustry 360の内容と新サービスについては関連記事を参照いただきたい。
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