全バンキングシステムをAzureへ 北國銀行「9割は保守運用」だったIT投資を転換 支えたMSの金融クラウド戦略:Microsoft Focus
厳格なセキュリティや法規制の壁を越えて、金融サービス業界のクラウド化が進みつつある。大手をかけるベンダーとして、Microsoftは日本の金融市場でクラウドの共創をどう進めるのか。国内外の戦略と、象徴的な事例でもある北國銀行の頭取が語ったメッセージから読み解こう。
金融機関や保険企業といった金融サービス業界のクラウド導入が目立ってきた。大手クラウドベンダーの間にも、厳格な法規制やセキュリティ要件に対応したクラウドプラットフォームやサービス群を提供する動きがある。
Microsoftは「Microsoft Azure」(以下、Azure)を基盤として、各産業に特化したクラウドサービスの強化を掲げている。同社は日本の金融市場に向けて、新たにどのようなサービスや技術を提供しようというのか。その内容と直近の事例から読み解きたい。
クラウド化とセキュリティの両面を支援 取り組みの基本は「3つの施策」に
2021年6月、日本マイクロソフトが金融サービス業界向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援策について記者説明会を開催した。同社は2021年1月に発表した「Microsoft Enterprise Accelerator」をはじめとして、金融機関へのクラウド導入を促進するプログラムを用意して、フィンテックおよびインシュアテック(保険業界向けテクノロジー)ビジネスの創出を支援する。また、「Financial-grade Cloud Fundamentals」(FgCF)(注)の概念に基づき、金融機関向けにマルチクラウドおよびゼロトラストを実現するアーキテクチャを提供する。
(注)FgCF:金融業界の企業向けに、マルチクラウドやゼロトラストを念頭に置いた上で、最新の技術を柔軟に活用できるインフラ環境とガバナンス、人材の在り方をそれぞれ説いたガイドライン
同社はまた、強化する3つの施策として「Co-Sell」と呼ぶ共同販売の展開による「Go To Marketにおける協業」、デジタル人材やAI人材を含めた「人材育成支援」、データ分析支援やコンサルティング支援、Center of Excellence (CoE)の共同運用を実施する「データ活用/モデル構築支援」を挙げた。
欧米で一足先に公開 金融サービス業界に特化したクラウドサービス群の中身は
Microsoftは2021年2月24日、金融サービス業界向けクラウドサービス群「Microsoft Cloud for Financial Services」を発表し、欧米の金融機関向けにはプレビュー版の提供を開始している。日本マイクロソフトの藤井達人氏(業務執行役員 エンタープライズ事業本部金融イノベーション本部 本部長)は「現時点では、日本市場での提供は未定」としつつ、同サービス群の内容について次のように語る。
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