小売りDXにMSが本腰 「Microsoft Cloud for Retail」から三越伊勢丹の“24時間型VRデパート”まで、支援に生かす“強み”とは:Microsoft Focus(1/2 ページ)
小売業界に特化したクラウドソリューション「Microsoft Cloud for Retail」を発表したMicrosoftが、世界規模で小売り向けの戦略を強化している。消費者向けのデジタル施策から在庫管理の効率化といった多様なニーズにソリューションで応える他、国内外の小売企業と個別にタッグを組んでDXを進める背景には、Microsoftが小売業だからこそ押し出したい強みがあるという。
リアル店舗からオンライン販売への移行が促進されるなど、小売業界にデジタル化の大きな波が押し寄せているのは誰の目にも明らかだ。
そんな中、小売業界に多くの顧客を抱えるMicrosoftが、流通(小売)および消費財市場に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)支援策を強化している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を大きく受け、デジタル活用が早急の課題となっている業界の課題解決に、業界特化型の体制で取り組むという。その中身とはどのようなものか。また、国内ではどのような事例や取り組みが進んでいるのか。2021年6月に開催された発表会の内容からお届けする。
日本マイクロソフトの山根伸行氏(エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 本部長)は「小売業界には、日本の社会や企業と同様に、少子高齢化や生産労働人口の減少、『2025年の崖』といった課題がある」とした上で「COVID-19の影響により、消費者の購買動向の変化や購買チャネルの多様化、データの機密性や厳密な管理などへの関心が高まっている」と指摘する。
「オンライン(ビジネス)においても、サプライチェーンを実店舗と同水準の体制に再創造したり、オンラインで購入した商品をリアル店舗で受け取るニーズに応えようと、店舗の位置付けを再定義したりする動きがある」(山根氏)
日本マイクロソフトは、自らの強みとして以下の3点を挙げる。中でも小売業界に向けて「同社が強く訴求したいのでは」と筆者が考えるポイントがある。
- 世界最先端のテクノロジーを持ち、顧客を支援するための各業界のノウハウや事例を持っていること
- 顧客のデータを第三者利用しないことや、データセキュリティにコミットしていること
- 顧客の事業と競合する事業はせずに、プラットフォーマーとして事業を担う立ち位置が明確であること
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