欧米との比較で見えた、日本企業のDXが抱える最大の“矛盾”とは――最新の「情報通信白書」から読み解く:Weekly Memo(1/2 ページ)
ニューノーマル時代に向けてDXの取り組みが急がれる日本企業。DX先進国の企業と比べてどのような課題があるのか。最新の「情報通信白書」から読み解きたい。
総務省が2021年7月30日に「令和3年版 情報通信白書」を公表した。2021年で49回目の発刊となる「情報通信白書」(以下、白書)は、国内のICT関連統計資料として最も長期かつ広範囲に網羅しており、一部を除いてオープンデータとして使えるのが利点だ。
令和3年版は「デジタルで支える暮らしと経済」と題した特集を組み、日本のこれまでのデジタル化への取り組みについて振り返り、国民生活、企業活動、公的分野におけるデジタル活用の現状と課題や、コロナ禍で進んだデジタル化による変化について検証している。
本稿ではその中から、「企業活動におけるデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の現状と課題」と題した一節に注目し、特にDX先進国の企業と比べた際の日本企業の課題について取り上げたい。
本題に入る前に、DXの定義についてあらためて述べておきたい。DXの意味を正しく理解していないと、その先の論議をしても無駄だからだ。白書はこれまで3年にわたってDXを主要なテーマに挙げてきているが、今回もページを割いて「デジタイゼーション」および「デジタライゼーション」と比較する形で次のように説明している。
「デジタイゼーションは会社内の特定の工程における効率化のためにデジタルツールを導入すること。デジタライゼーションは自社内だけでなく外部環境やビジネス戦略も含めたプロセス全体をデジタル化すること。それに対し、DXはデジタル技術の活用による新たな商品やサービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取り組みを指す概念である」
さらに、図1を示した上で、「社会の根本的な変化に対して、既成概念の破壊を伴いながら新たな価値を創出するための改革がDXである」とも念押ししている。DXの意味については本連載でも幾度も述べてきたが、最も重要な点なので白書と同様にあらためて記しておく。
先進国との比較で明らかになった、日本企業のDXが抱える「最大の矛盾」
関連記事
- DXに迷ったら読む「最適解」の見つけ方――編集部厳選、事例5選
DXがあらゆる分野の企業や組織に求められる中、多くの企業が抱える悩みが「自社の目指すべきDXとは何か」という点だ。具体的にどのデジタル技術を自社のどの部分に導入し、どのようなゴールを描くかは、全て企業の判断にかかっている。ITmedia エンタープライズ編集部は、自社や自組織に必要なDXを模索する当事者たちをインタビューした。彼らが見つけたDXの最適解とは。 - DX推進に不可欠なデータ/アナリティクス、日本では専任組織不在で活用されず――ガートナー調査
世界ではデータ/アナリティクス(D&A)のリーダーがDXに大きく関与し、D&AはDX推進に不可欠とされているが、日本企業ではD&Aの専任リーダーや組織がほとんど存在せず、D&AとDXが混同されがちであることが分かった。日本企業が成功を収めるために必要なことは? - NTTデータ躍進、SIerの“御三家”に波乱か システム市場に起きる3つの変化
DXに取り組む企業が増える中、国内ITサービス市場ではベンダーの勢力図にも変化が起きているようだ。IDC Japanが興味深い調査結果を発表したのを機に、同市場の最新動向を筆者なりに考察してみたい。 - 世界14カ国CISOの「リアルな声」 セキュリティ投資で日本企業特有の課題が判明
日本プルーフポイントは、世界14カ国のCISOを対象に実施したグローバル実態調査の結果を発表した。CISOが今後注目するサイバーセキュリティ脅威や企業内部のリスクの他、セキュリティ投資については日本特有の課題も明らかになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.