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エーザイの「統合報告書」はなぜ読みごたえがあるのか 88の評価指標が導き出す企業理念の正しさの証明
企業理念の正しさを証明するために「財務諸表に表れない見えない価値」をどう伝えるか。人や研究開発への投資は事業の成長を願う当事者からすると不可欠なものだが、収益を可視化しにくいために投資家の理解を得にくい。データ分析を駆使してこの問題への答えを示したのがえエーザイCFOの柳 良平氏だ。
エーザイの専務執行役CFO(最高財務責任者)で早稲田大学大学院 客員教授の柳 良平氏は、ESG経営の可視化手法として、データ分析を駆使した独自の「柳モデル」を提唱し、その成果を証明した(前回記事「エーザイCFOの「柳モデル」が証明したESG経営"見えない価値"の可視化手法とデータ分析の力」を参照)。この活動の集大成の一つとして、エーザイは2020年度の「統合報告書」(現「価値創造レポート」)で同社のESGがPBRとどう相関しているのかを開示した。
「人件費を増やすと5年後の企業価値はどう変わるか」 見えない価値を示す88の指標
同社がESGのKPIとする88個の指標について、平均で12年遡及(そきゅう)して28年分のPBRと可能な限り照合し、KPIの向上がPBR(注)の上昇をもたらすことを実証した(下図は88個のKPIから一部を抜粋したもの)。
「世界で初めて一企業が自社のESGと企業価値の関係を重回帰分析により統計学的な有意さをもって証明し、それを日本語と英語による統合報告書で開示した試み」と柳氏は説明する。
図中の水色部分に示した式が、相関関係の証明に使った回帰式だ。この回帰式は短期的な財務の影響を消し去った上で、ESGが長期的にPBRにどう影響しているかの相関関係を「遅延浸透効果仮説」に基づいて求めている。
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