“オンプレ逆戻り”の教訓を生かせ 10年後に笑うクラウド活用戦略のポイント:Weekly Memo(1/2 ページ)
クラウドシフトの波やオンプレミスへの“揺り戻し”を経験し、さらなる変化を見据える企業にとって、今後の重要なポイントは何か。ガートナーの亦賀忠明氏の話を基に考察した。
「企業は2030年に実現したいビジネス像を見据えたクラウド活用を模索すべきだ」――。こう語るのは、ガートナージャパン(以下、ガートナー)の亦賀(またが)忠明氏(リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュトバイスプレジデント、アナリスト)だ。同社が2021年11月16〜18日にオンラインで開催した「Gartner IT Symposium/Xpo 2021」における「クラウドコンピューティング・トレンド2021」と題した講演での発言である。
亦賀氏の講演や発言から、企業が今後クラウドを活用する上で重要なポイントについて筆者が注目した内容を紹介し、考察したい。
オンプレミスへの「揺り戻し」を超えて、クラウド戦略に求められる新しい視点とは
日本企業のIT投資から見たクラウド化の動きについて、亦賀氏はガートナーの調査結果を基に次のように述べた。
「クラウドへの投資はここ数年増加しているが、一方で減少傾向にあったオンプレミスも最近になって増加に転じている。この動きはオンプレミス回帰ではなく、クラウド化しづらいシステムが相応にあることを表している。肝心なのは、クラウドかオンプレミスかではなく、いずれにしても(クラウドの活用戦略に)変化が重要になってきていることだ」(亦賀氏)
また、クラウドのインパクトについては、図1で左側に従来のシステム形態、右側にクラウドネイティブな形態を示し「システムの在り方として、今まさに左から右へと歴史的な変化が起きている。だが、一方で左の形態のままクラウド化する動きもある。それではクラウドならではの大きなメリットは得られない」(亦賀氏)と指摘した。
では、クラウドの10年後を見据えた活用の方向性はどのようなものか。同氏は「必要なときに必要なサービスを、速く、安く、より満足の行く形で、いつでも、どこでも、セキュアに使える世界を目指すものだ」と説明した。この表現は、もともとクラウドが持つ特性といえるが、同氏の先ほどのコメントにある「クラウドならではの大きなメリット」も表したものと受け取れる。
この方向性を踏まえ、亦賀氏は2030年を見据えた企業のクラウド活用の推奨例として、次のようなアプローチの仕方を示した。
「既存のシステムをどのようにクラウド化していくかというより、2030年に実現したい『ビジネス像』を描き、それに必要な新しいITの仕組みをクラウドサービスでそろえていく。つまり、2030年からバックキャストする形でクラウドネイティブな仕組みを作っていくことを優先する。一方で、クラウド化が大変な既存の基幹システムなどは、現状の安定稼働を優先させて当面手を付けないようにする」(亦賀氏)
このコメントについては、亦賀氏による詳細な説明を筆者が簡略化した表現に変えたことをお断りしておく。ただ、同氏のメッセージとしてあらためて強調しておきたいポイントは「2030年からバックキャストする」というアプロ−チの仕方だ。これが冒頭の発言の意味でもある。
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