“オンプレ逆戻り”の教訓を生かせ 10年後に笑うクラウド活用戦略のポイント:Weekly Memo(2/2 ページ)
クラウドシフトの波やオンプレミスへの“揺り戻し”を経験し、さらなる変化を見据える企業にとって、今後の重要なポイントは何か。ガートナーの亦賀忠明氏の話を基に考察した。
企業がクラウド活用に向けて取り組むべき4つのステップとは
2030年を見据えた新しいITの仕組みはバックキャストする形で考えていくとして、クラウド活用に向けて企業はこれから具体的にどのように取り組んでいけばよいのか。亦賀氏は、2025年までの実行計画として図2を示した。
実行計画のステップとして、左下の「1」から右上の「4」まで4つの段階がある。左上に記されている5つの項目は、4つのステップ全てに関連する内容だ。
この図中の表記で同氏が説明を加えたところを挙げておこう。第1ステップにある「プライマリ・クラウド決定」は「優先的に使いたいクラウドがあれば素早く採用してみる」(亦賀氏)ことを意味する。それ以上の説明はなかったが、これは2030年からバックキャストして選ぶクラウドサービスとは別に、開発環境やコラボレーションツールなどの必要不可欠なサービスを指していると推察される。
第2ステップ以降に記されている「スキル」について、同氏は「クラウドファーストはすなわちスキルファーストでもある」と述べ「クラウドは自動車と同じだ。自分で運転して活用度を高めていくことが大事だ」と強調した。
さらに、同氏が図2の中で最も重要なポイントとして挙げたのが、左上から赤い矢印が出ている中の「CoE(Center of Excellence)の設立と推進」だ。組織横断でスキルの高い人材を登用したCoEを設置することで、クラウド活用を力強く推進していく態勢作りの重要性を訴えていた。
なお、これまで述べてきた2030年に向けたさまざまな取り組みを踏まえて、同氏は2022年に向けて日本企業が注目すべきクラウドのトレンドとして図3に示したキーワードを挙げた。この内容については同社の発表資料に詳しい説明がある。
最後に、亦賀氏の話を受け、筆者も企業のクラウド活用について基本的な点を一言述べておきたい。それは「クラウドに関するどんな取り組みも、クラウドサービスのメリットを最大限に生かすことを第一義に考えるべきだ」ということである。
特にオンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドについては、仕組みそのものに気を取られてクラウドサービスの良さが生かされていないケースを、これまでの取材で幾度も目にしてきた。ハイブリッドクラウドを構築する際にも、クラウドサービスのメリットを最大限引き出すようにしたいものである。
では、クラウドサービスの良さとは何か。それがまさしく亦賀氏が図1で示したクラウドのインパクトの内容である。「クラウドのメリットを最大限生かせ」というのは、ITに関わる記者として今後も言い続けていきたい。それが社会のためになると考えるからだ。
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