労組問題を抱えたAmazonが「人協調型完全自律ロボット」に投資する意義:Retail Dive
倉庫におけるロボットの可能性を追求し、技術開発を進めるAmaznが2022年6月に、今までとは異なるロボットを発表した。倉庫従業員の労働問題が懸案化する中で発表された、人と協調する完全自立型移動ロボットは救世主となるか。
Amazonは2022年6月、同社初の完全自律型移動ロボット「Proteus」を発表した。Proteusは荷物を運ぶカートを持ち上げ、施設内を移動する役割を担う。
Proteusはまず、フルフィルメントセンターやソートセンターにおいてAmazonが「GoCarts」と呼ぶ、荷物を移動させるための非自動型のカートのアウトバウンド処理エリアに配備される予定だと同社のブログ投稿は伝えている。Amazonが開発した独自技術を使い、施設内や従業員の周囲を自律的に移動する。
「当社のビジョンは、ネットワーク全体でGoCartの扱いを自動化することで、施設内で重い荷物を人間が移動させる必要性を減らし、作業員をもっと有意義な仕事に従事させることにある」とAmazonはブログ投稿で述べている。
Amazonの巨大なフルフィルメントネットワークにおけるロボットの活用は、同社がKiva Systemsを買収して施設でのロボットの使用を開始した2012年以降、急速に拡大している。
ロボットは倉庫労働の従事者を救うのか CEOの説明は
イベント「Re:MARS 2019」で倉庫ロボットをお披露目した3年前の段階で既にAmazonは20万台以上のロボット駆動の装置を倉庫などに配備していた(注1)。現在は施設内に十数種類のロボットシステムが存在し、52万台を超えるロボットを使う。
Amazonがロボットへの投資を続けるのは、eコマースブームに乗って急速な拡大を続けてきた同社が「施設の人員が過剰になっていること」に突然気付いたからに他ならない(注2)。加えて倉庫労働者を中心とする労働組合の活動にも直面し、倉庫の安全管理に対する不満が続いていることもある(注3)。
アンディ・ジャシーCEOは、2021年の株主へのレター(注4)の中で、米国の公的な統計を引用し、Amazonで記録されている事故率は同業他社の平均より高いことを明らかにした。
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