FinTech企業と銀行の争いは不要だ:Payments Dive
FinTech企業は銀行にとってディスラプターなのか、それとも助けなのか。サンフランシスコに拠点を置く決済企業Modern Treasuryのディミトリ・ダディオモフCEOは「銀行とFinTech企業は競争するのではなく、提携するようになっている」と話す。同氏がFinTech企業と銀行の現在地と未来を解説した。
ここ数年、FinTech企業の推進者たちはFinTech企業を「銀行の脅威」であると位置付けてきた。FinTech企業は金融サービスを再定義し、銀行に新たな競争をもたらす「止められないトレンド」(注1)であるという話を聞いたことがある。
このような意見を持つのはFinTech企業の推進者だけではない。JPMorgan Chaseのジェイミー・ダイモンCEOは、「世界の金融システムの中で銀行の役割が低下しており、あらゆる方面から『異常な競争』(extraordinary competition)(注2)に直面している」と述べている。
銀行は決済会社やFinTech企業、取引所、ビッグテック、さらにはWalmartのような小売業者との競争に直面していることは間違いないが、この状況は全て変わりつつある。
銀行とFinTech企業は互いに競争するのではなく、提携するようになってきているのだ。
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックは、デジタル決済やオンラインでの資産管理、オンラインバンキングへのシフトを加速させた。決済や融資、特定形態の預金など、多くの銀行商品が従来の銀行システムからFinTech企業へ移行している。2021年だけでも1300億ドルがFinTech企業に投資され、新興企業は大規模にビジネスを推進できるようになった。米国とカナダにおいてデジタル決済は最大のFinTech分野となっており、2021年に市場規模は1.2兆ドルを超えると評価(注3)される。
金融サービスやFinTechにおいて、今後最も影響力のあるイノベーションは銀行とFinTech企業の密接なパートナーシップから生まれると予想できる。
新しい波に乗れるか
Citibankは2020年に発表したレポートで、「銀行はFinTech企業を単なる脅威として考えるのではなく、パートナーとしてコラボレーションする方向に切り替えている」と指摘した(注4)。
この流れにより、FinTech企業と銀行の双方が相手の求めるものを提供できる。FinTech企業は銀行が持つ事業規模と顧客との関係を、銀行は革新的なテクノロジーと新たなアプローチを求めている。
パートナーシップの例として、INGがFinTech企業Minna Technologiesと提携し(注5)、企業のデジタル購読を管理するための単一プラットフォームを立ち上げた。
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