自治体DXの不都合な真実 自治体向けソリューションの市場規模「2026年に大幅縮小」のなぜ:アナリストの“眼”で世界をのぞく
矢野経済研究所によると、自治体向けソリューションの市場規模は2026年度には大幅に縮小するという。デジタル庁が「自治体DX」の大号令を掛けているにもかかわらず、なぜ縮小するのか。
この連載について
目まぐるしく動くIT業界。その中でどのテクノロジーが今後伸びるのか、同業他社はどのようなIT戦略を採っているのか。「実際のところ」にたどり着くのは容易ではありません。この連載はアナリストとしてIT業界と周辺の動向をフラットに見つめる矢野経済研究所 小林明子氏(主席研究員)が、調査結果を深堀りするとともに、一次情報からインサイト(洞察)を導き出す“道のり”を明らかにします。
2021年9月に発足したデジタル庁は行政のデジタル化を推進している。「自治体DX」は行政のデジタル化における重要なテーマの一つであり、市場は大きく動いている。行政が語る「自治体DX」は、ビジネス変革を目指すようなDX(デジタルトランスフォーメーション)とは異なり、ペーパーレス化やRPA導入による自動化、システムの標準化などやBPRなどデジタイゼーション、デジタライゼーションの領域での取り組みが中心となっている。
自治体向けソリューション市場「34.2%減」の理由は?
まず、矢野経済研究所が発表した自治体向けソリューション市場規模推移を予想した図をご覧いただきたい(2023年1月にデータ更新した図はこちらの記事で確認できる)。自治体向けソリューション市場の規模は、自治体にシステムやサービスを提供する事業者の売上高から推計している。
2023〜2025年度は前年度比10%前後で好調に成長した後、2026年度には前年度比34.2%減と大きく減少すると予測した。このように急激に市場が縮小する理由は「自治体DX」が政策として推進されていることにある。ITベンダーの観点から見ると、次に述べる理由で自治体向けソリューションは数年先に売り上げが大きく下がる。
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