「動いているシステムはいじるな」は数々の修羅場プロジェクトを乗り越えてきたITのプロたちが作り上げた鉄則の一つとされてきました。しかし、「いじるな」の“呪文”で封印されてきたこれらのシステムにもいよいよ手を加えなければならない時期が来るようです。
2025年問題だけではないレガシーの問題
経済産業省2018年に発表した「DXレポート」はこれからの日本企業が直面するICTの課題を「2025年問題」として整理し、対策を促すものでした。
人材面では団塊の世代が後期高齢者に差し掛かって人手不足が本格化する時期であり、同時に企業ITの分野では古いSAP製ERPシステムのサポート期限やPSTNの廃止はじめ、日本企業にIT導入が進んだ時期に導入されたシステムや前提としてきた技術が軒並み保守期限を迎えます。
SAP ECC 6.0の保守期限は現在のところ2027年まで延長されることが発表されましたが、リプレースを担うエンジニア不足が深刻化しており、プロジェクトに着手できない企業が出ているとの話も聞きます。SAPは顧客の投資を保護する旨をメッセージとして示してきましたから、何らかの措置はあるかもしれませんが、いつまでも旧資産の保守を続ける訳にはいかないでしょう。
企業ITの基礎を作りあげた世代が退職してしまえば、ブラックボックスはさらに謎だらけになるかもしれません。アプリケーションの挙動から実装を推測することもできるでしょうが、そこまでして古いシステムを使い続けるだけの価値があるか、という問いは当然生じます。
「動いているのだから触るな」はシステムのお守りをする方にとっては鉄則のルールだったかもしれませんが、現在のレガシーシステムを移行する立場の皆さんは、「動いているけれどもあえて置き換える」という選択を要求されています。
公共、金融システムの「動いているのだからいじるな」の魔法が解ける
2025年にはもう1つ心配な出来事があります。「昭和100年」問題です。
※本稿は2022年8月16日配信のメールマガジンに掲載したコラムの転載です。購読はこちら。
関連記事
- 銀行は本当に3億行のCOBOLコードと縁を切れるのか 脱メインフレームの動向
問題なく稼働するプログラムに触れてはいけない。変えようとしてはならない。メインフレームシステム運用のセオリーは万国共通だったようだ。しかし、銀行のコア機能もいよいよクラウドを意識せざるを得ない時期が来たようだ。米国の銀行業界のトレンドを調査から追う。 - 「2025年までに過半数が影響」 遠くの戦禍は日本のIT調達にどんな影響を与えるか
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、地政学リスクが改めて注目されている。日本企業によるIT調達に地政学リスクはどう影響を及ぼすのか。ガートナーが評価する際に考慮すべき「3つの要素」を提言した。 - SMBCの次期DX推進基盤にも採用 NECがメインフレーム新製品を発表【訂正あり】
NECが「メインフレーム継続宣言」通りに新製品を発表した。独自プロセッサも開発を継続。担当者は「変える必要がないところを変えずにDXを推進するのが最高効率」と語る。 - メインフレームのオープン化が進まない理由
日本オラクルが先週、メインフレームをオープン化するミドルウェアを発表した。こうした製品が出てくるのは、メインフレームのオープン化が進んでいないからだ。なぜか。 - りそなグループのシステム更改が大詰め、コスト削減と営業力強化へ
りそなHD傘下の3行の情報系システムや営業店システムの更改が相次いで完了した。グループ共通のITインフラが実現することで、コスト削減と営業力強化を見込む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.