脱「中国依存」の米企業 たどり着くのは“天国”か“地獄”か:SupplyChain Dive
米中対立が深まる中、米国企業にとって中国への調達依存度の高さは大きなリスクとなっている。多くの企業が脱「中国依存」に苦戦する中、Williams-Sonomaは中国依存率を大幅に減らした。同社がたどり着くのは全ての問題がクリアされた“天国”だろうか、それとも……。
米国のホームグッズ小売大手のWilliams-Sonomaは、中国への調達依存度を下げる努力を続けているが、中国の代替となる高品質な商品の供給元を見つけるのに苦労している。
Williams-Sonomaのプレジデント兼CEOを務めるローラ・アルバー氏は、2022年8月24日に開催された第2四半期決算説明会で、「(サプライチェーン)リスクの高い子ども用の家具を製造できる高品質の供給元を複数確保できるよう努めている」と述べた(注1)。続けて、同氏は「品質と持続可能性の両方の基準を満たすサプライヤーを見つけるのは困難だ」と指摘した。
「中国に代わる供給元を探せ」
Williams-Sonomaは、中国で製造された家具やその他商品に対して米国が25%と高い関税を課していることを受け、中国からの調達を半分に減らす方向で動いてきた。アルバー氏は同社が2020年以降、「中国のリスクにさらされる度合いを大幅に削減した」と述べる。
パンデミック以前から、企業は中国との関係を見直し始めていた。関税や賃金の上昇、リードタイムの長期化によってコストが上昇し、「低コスト」という中国の優位性が損なわれたからだ。
Williams-SonomaのCFO(最高財務責任者)ジュリー・ウォーレン氏は2020年5月、「当社はかなりの額の関税をコストとして吸収した」と述べ、「中国における生産を2022年中に約50%削減することを目標にしている」ことを明らかにした(注2)。
新型コロナウイルス感染症(CIVID-19)がもたらしたパンデミックによってサプライヤーは多様化し、サプライチェーンの回復力を維持するための取り組みが強化された。
民間企業と米連邦政府がサプライチェーンの国内化を推進し、企業が海外の生産拠点を米国に戻し、海外へ直接投資した結果、製造業の米国回帰を推進するThe Reshoring Initiativeによると、過去最高となる26万1000人の雇用が米国で創出された(注3)。一方、米中ビジネス協議会(USCBC)によると、中国のCOVID-19対策の一環である規制措置によって、中国のビジネス展望に対する楽観的な見方は過去最低水準まで低下した(注4)。
それにもかかわらず、中国依存から脱却することは難しい。パンデミックを原因とするサプライチェーンの大問題が世界中のサプライヤーに影響を与えたことは、それを証明している。
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