「ソリューション」という謎の造語 解決策は買えるのか問題を考える:「不真面目」DXのすすめ
筆者によれば、「ITソリューション」は海外ではあまり使われることのない言葉だとか。「解決策」をうたう商品を購入すれば、課題がすぐに解決できるに違いない――。こうした“思い込み”を誘う言葉が多用されることで、ユーザー企業で何が起きているのか。早速見てみましょう。
この連載について
この連載では、ITRの甲元宏明氏(プリンシパル・アナリスト)が企業経営者やITリーダー、IT部門の皆さんに向けて「不真面目」DXをお勧めします。
「不真面目なんてけしからん」と、「戻る」ボタンを押さないでください。
これまでの思考を疑い、必要であればひっくり返したり、これまでの実績や定説よりも時には直感を信じて新しいテクノロジーを導入したり――。独自性のある新しいサービスやイノベーションを生み出してきたのは、日本社会では推奨されてこなかったこうした「不真面目さ」ではないでしょうか。
変革(トランスフォーメーション)に日々真面目に取り組む皆さんも、このコラムを読む時間は「不真面目」にDXをとらえなおしてみませんか。今よりさらに柔軟な思考にトランスフォーメーションするための一つの助けになるかもしれません。
筆者紹介:甲元 宏明(アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト)
三菱マテリアルでモデリング/アジャイル開発によるサプライチェーン改革やCRM・eコマースなどのシステム開発、ネットワーク再構築、グループ全体のIT戦略立案を主導。欧州企業との合弁事業ではグローバルIT責任者として欧州や北米、アジアのITを統括し、IT戦略立案・ERP展開を実施。2007年より現職。クラウド・コンピューティング、ネットワーク、ITアーキテクチャ、アジャイル開発/DevOps、開発言語/フレームワーク、OSSなどを担当し、ソリューション選定、再構築、導入などのプロジェクトを手がける。ユーザー企業のITアーキテクチャ設計や、ITベンダーの事業戦略などのコンサルティングの実績も豊富。
日本のIT業界には不思議な慣習が多く存在しますが、筆者が長年不思議に感じているのは「ITソリューション」や「ソリューション」という単語です(以降、「ソリューション」と略します)。国内IT系メディアでも頻繁に登場するこの単語は、国内IT業界の造語だと筆者は考えています。海外のIT系の人で「IT Solution」という英語を使う人に会ったことがありませんし、海外のIT系メディアで「IT Solution」という単語を見ることもほとんどないからです。
「“解決策”を売る企業とは何か」
いつ頃からこの単語が日本で使われるようになったのかはよく分かりませんが、Google Trendで検索するとこのサービスが開始された2004年には既に日本でよく使われていたようですので、2000年以前から存在していたのでしょう。「ソリューション」という言葉には単なるソフトウェア/ハードウェア製品ではなく、「顧客の課題を解決するものです」というメッセージが込められているのだと思われます。
ITベンダーが自らを「ソリューションベンダー」と名乗るケースも少なくありません。「商品が解決策なのか」「解決策を売る企業とは何か」と怪しく感じてしまうのは、筆者がへそ曲がりだからでしょうか。
IT商品だけで企業の問題を解決できるはずがない
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