広がりを見せる企業のNFT活用 プロバスケチームのファンコミュニティ事例
さまざまな業界がNFT(Non-Fungible Token)などの活用を模索する中、あるバスケットチームが2022年10月5日より新たなNFTサービスを展開する。「NFT活用の背景」や「サービス開始までの苦難」「今後への期待」を聞いた。
B.LEAGUE(ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)に所属するシーホース三河は2022年9月21日、NFTサイト「MatchUps」を2022年10月5日に開始すると発表した。同サービスはシーホース三河のファンに向けて同チーム所属選手のプレーシーンやオフショットなどをNFTとして販売するものだ。
ファンとのつながりを強化する策を模索 NFTにたどり着いたワケ
「シーホース三河を応援してくれるファンとどのようにつながりを強化していくか。コロナ禍でも楽しんでもらう方法はないのか。これらを満たせると思ったのがNFTだった」――。そう話すのはシーホース三河でシニアコーディネーターを務める堀江隆治氏だ。
シーホース三河における2020〜2021年シーズンのチケット収入は昨対比で11.5%の減少となり、「チームとファンの距離感が広がっていた」と堀江氏は振り返る。スポーツ業界は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を最も受けた産業の1つで、特に地方に拠点を持つチームにとっては厳しいシーズンとなった。
このような状況を打破するために、シーホース三河はイグニション・ポイントが提供するNFTコンテンツ運営支援サービス「NFT SCENES」を利用した。同サービスは新型コロナウイルス(COVID-19)で影響を受けるスポーツ業界を支援するもので、スポーツクラブにおける「オリジナルNFTサイトの構築」や「NFTコンテンツの発行」「試合当日のNFTコンテンツ販売」を可能にする。初期費用はオプションなどを追加しない限り無料で、始めやすさもユーザーにとっては利点だ。
NFT SCENESの特徴とサービス開始までの課題
NFT SCENESは5つの機能を持つ。
1つ目が「クラブが肖像権を所有する画像をシステム上で販売する機能」、2つ目が「サイトで購入した画像のプロフィールを確認できる機能」、3つ目が「サイトで購入した画像をコレクション一覧として管理する機能」、4つ目が「サービス利用者にクラブニュースなどの情報を提供する機能」、5つ目が「ファン同士で交流し、コレクションを披露できる機能」だ。
イグニション・ポイントの鈴木崇之氏(デジタル・ユニット シニアマネジャー)は「NFT SCENESは『新たなマネタイズポイントの創出』『ユーザーにフォローやコミュニケーション機会を創出』『簡易な操作で短期NFTの発行が可能』という強みを持つ。まずはスポーツ業界で根を張り、今後は他の分野でも強みを生かして取り組んでいく」と話す。
スポーツチームやリーグと連携したNFTサービスは他にも存在するが、これらのサービスとNFT SCENESの違いに「発行までのスピード」を鈴木氏は挙げる。
「NFT SCENESはスポーツ関連のNFT販売で唯一、チーム単位で短期発行が可能なサービスだ。試合終了から時間を空けることなくNFTを提供できれば試合の熱量を維持でき、ファンにとっても価値のあるサービスとなる」(鈴木氏)
堀江氏によれば、シーホース三河とイグニション・ポイントは約1年半前からMatchUpsに取り組み始めた。両者は「NFTなどに関する法律や規定は変更や追加が頻繁に行われ、B.LEAGUEの規定との兼ね合いなどは今回のサービス開始までの過程で課題だった」と話す。
B.LEAGUEは2022年5月2日より、B.LEAGUE公式NFTサービス「B.LEAGUE PARK」を開始しており、シーホース三河よりも早くNFTサービスに取り組んできた。
競合になるとも思われるが、堀江氏は「B.LEAGUE PARKは動画をメインに扱っている。MatchUpsは写真などをメインで扱う。しっかりと差別化ができており、競合とは思わない。むしろ、NFTというサービスが先に浸透してくれればシーホース三河にとっても良いことだ」と現状を語る。
コロナに関係なくサービスの強化を
堀江氏は新型コロナウイルス(COVID-19)が沈静化してもNFTサービスをやめるつもりはない。
シーホース三河の中村太地選手は「これまでは密にならないように、SNSでのコミュニケーションを大切にしてきた。MatchUpsは選手のプレイやオフでの一面をまるで自分が撮影したかのように楽しめる。その瞬間を『独り占め』できるのが魅力だと思う」とコメントしている。
堀江氏によれば、選手たちの中にもNFTが浸透してきており、MatchUpsに関してもポジティブな声が多いようだ。
「コロナに関係なくNFTの特性を生かしてサービスを続けていきたい。NFTを所有する会員の方に何か特別なイベントを行うとか、そういうことも可能だろう」(堀江氏)
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