イーサリアムでよく聞く「The Merge」 これさえ読めば基本が分かる
イーサリアムの大型アップデート「The Merge」が近日中に実行される予定だ。本稿では「イーサリアムの基本」「イーサリアムが抱えていた課題」「The Mergeで起こる変化」を解説する。
イーサリアム財団は2022年8月24日、同社のブログで「Mainnet Merge Announcement」を公開し、イーサリアムブロックチェーンの大型アップデート「The Mergeがマイニングの最終合計難易度(TTD)でタイミングを決定され、9月10〜20日の間に行われる予定だ」と発表した。
イーサリアムって何だっけ
イーサリアムとは、分散型アプリケーション「dApps」や「スマートコントラクト」を動かすためのブロックチェーンプラットフォームの名称だ。同プラットフォームで使用される暗号資産がイーサ(ETH)と呼ばれる。
イーサリアムは2013年に当時19歳だったヴィタリック・ブテリン氏によって考案されたブロックチェーンプラットフォームで、2014年にイーサリアム財団が設立された。イーサリアム上でプログラムを自動で実行するスマートコントラクトなどはDeFi(分散型金融)領域を中心に広がりを見せ、暗号資産であるETHの時価総額はBitcoinに次ぐ2位となっている。
イーサリアムが抱えていた課題
イーサリアムは暗号資産を運営するためのブロックチェーンではなく、金融システムやガバナンスシステムなどさまざまな業務を分散的に実行できるサービスとして注目を集めてきた。実際にDeFiシステムやNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)など多くのサービスがイーサリアムで運営されている。
サービスプラットフォームとして成長するイーサリアムだが、2つの課題を抱えている。
1つ目が「ネットワークのスケーラビリティ」だ。これまでのイーサリアムは1秒間に最大15トランザクションを処理できる性能を持っていたが、DeFiやNFTが成長するに伴いトランザクションが大幅に増加し、ネットワーク利用が困難になった。
2つ目が「増加し続けるエネルギー消費量」だ。ブロックチェーン技術は特定組織に依存しない「PoW」(Proof-of-Work)というアルゴリズムで運営される。新たなブロックチェーン作成に必要な数字を、「マイナー」と呼ばれる組織が専用マシンで「マイニング」という作業を行い見つけ出す。この工程で莫大な電気を使用するため、環境への影響が懸念されている。
The Mergeの流れ
The Mergeの目的はPoWからPoS(Proof-of-Stake)へと移行し、スケーラビリティと電気消費の問題を解決することにある。PoSとは暗号資産をブロックチェーンに預ける(ステーク)ことで取引の検証を行い、新規ブロックを生成できるコンセンサスアルゴリズムだ。
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