アップル、サプライヤーに2030年までの「脱炭素化」を要請:Supply Chain Dive
Appleが同社に部品を納めるサプライヤーに対して、2030年までに生産過程の脱炭素化を要請した。ティム・クックCEOが「気候変動との戦いは最優先課題」と語るように、同社は以前から気候変動対策への取り組んでいる。温室効果ガス削減に関するさまざまな手段がある中で、なぜ同社はサプライヤーの脱炭素化を重視するのか。その理由は。
Appleは2022年10月25日、「当社に部品を納めるサプライヤーに対して、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出量を大幅に削減するように要請している」と発表した(注1)。同社は2030年までにサプライチェーン全体をカーボンニュートラル(注2)にすることを目指している。
同社はサプライヤーに対して、(太陽光や風力で発電された)再生可能エネルギー(再エネ)を100%使用するなどの方法で、Apple関連の事業を脱炭素化するよう求めている。Appleは毎年の監査を通じて進捗(しんちょく)を確認する予定だ。
Appleはなぜ「サプライヤーの脱炭素化」に熱心なのか?
Appleは包括的なサステナビリティー目標の一環として、ヨーロッパで30〜300メガワットの大規模な太陽光発電システム(メガソーラー)および風力発電システムを建設する計画を発表した。同プロジェクトの目標は、ヨーロッパ大陸にある全てのApple製品を低炭素電力(注3)で駆動するのに十分な電力を再エネで得ることだ。
Appleは、製造から消費者による最終消費に至るまで、サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を削減するために、「あらゆる手段を徹底して講じる」としている。
Appleのサプライヤーのうち200社以上(Appleの直接製造コストの70%以上に相当する)が、Apple製品を生産するに当たって風力や太陽光、他のクリーンエネルギーを使用することを既に約束した。
Appleに(半導体)チップを提供している台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing:TSMC)をはじめとする大手サプライヤーは、Apple製品の生産の100%を再エネで賄うことを約束した。
Appleが取り組むのは、サプライヤーの脱炭素化だけではない。既存技術を使っている間は避けられないとされる、「25%の排出量」への対策にも取り組んでいる。同社は世界各地で進んでいる3つの森林プロジェクトに投資しており、「2025年には100万トンのCO2を大気から取り除くことができる」と見込んでいる。
Appleのティム・クックCEOは声明で「気候変動との戦いは、依然としてAppleの最優先事項の一つだ。この瞬間がこの言葉を行動に移す契機となる」と述べた。
「2030年までにAppleのサプライチェーンをカーボンニュートラルにするために、サプライヤーと継続的なパートナーシップを築いていきたい。Appleの気候変動対策は入口でとどまることはない。私たちは波及効果を生み出し、より大きな変化を起こすことを決意している」(クック氏)
多くの企業は、一般的にCO2排出量の大部分を排出しているとされているサプライヤーへの取り組みが遅れている。2022年10月20日、Boston Consulting Groupは1600以上の企業を対象とする調査の結果を発表した。同調査によると、CO2排出量を包括的に測定している企業は10%に過ぎず(注4)、2021年の9%からわずかな上昇にとどまっていることが分かった。
(注1)Apple calls on global supply chain to decarbonize by 2030
(注2)生産活動などで発生する温室効果ガスを実質ゼロにすること。植林やグリーンボンド(環境改善活動資金の調達を目的として、自治体や企業が発行する債券)の購入などによって、生産活動に伴って生まれる温室効果ガス排出量全体から、吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする。
(注3)発電される際に排出されるCO2の量を示す数値である「排出係数」が小さい電気のこと。
(初出)Apple calls on suppliers to decarbonize operations by 2030
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