Veeam、データ保護の動向に関する調査を公開 企業のレジリエンスの実態は?
ランサムウェア攻撃が激化する中、災害復旧、事業継続といった意味でデータ保護の重要性は高まっている。Veeamが公開したデータ保護の動向を調査したレポートから企業の実態が明らかになった。
バックアップやリカバリー、データ管理ソリューションを提供するVeeam Software(以下、Veeam)は2023年1月17日(現地時間)、グローバル企業におけるIT施策の責任を持つ意思決定者とITシステム担当者4200人以上を対象に、データ保護の動向を調査した「データプロテクションレポート 2023(英語)」を発表した。同調査は2023年で4回目となる。
Veeamによれば調査結果から、企業はより複雑なハイブリッドIT環境においてデータが十分に保護されていないと感じており、この対応に迫られていることが判明した。
5分の4の企業がビジネス部門の期待に応えられていない
調査結果のサマリーは以下の通りだ。
事業継続には「最新のデータ保護」が必要
5分の4の企業は「ビジネス部門が期待するものとITサービスが提供できるものの間にギャップ(不満や不安)を感じている」と回答した。82%は、必要とされるシステム復元の速度とIT部門が実際に復元できる対応速度の間に「可用性のギャップ」があると回答している。
また79%の企業は、消失してもよいデータ量とIT部門によるデータ保護頻度との間に「保護ギャップ」があるとしている。この課題に対処するため、回答企業のうち57%が「2023年にデータ保護予算を増やし、主要データ保護ソリューションを変更したい」と回答している。
82%は必要とされるシステム復元の速度とIT部門が実際に復元できる対応速度の間に「可用性のギャップ」があると回答した。また79%の企業は、消失してもよいデータ量とIT部門によるデータ保護頻度との間に「保護ギャップ」があると回答している(出典:Veeamの提供資料)
データ保護予算は増加している
調査によると、2023年に世界的に企業はデータ保護予算を6.5%増やす見込みだ。データ保護予算増加を計画している85%の企業における平均増加率は8.3%で、多くの場合、サイバーセキュリティツールへの投資と連動している。
課題意識と対策が進むが、ランサムウェア攻撃は依然として脅威
2020〜2022年の間、サイバー攻撃は組織にとって最も影響力のある機能停止を引き起こした。85%の企業が「過去12カ月間に少なくとも1回は攻撃を受けた」と回答している。具体的には、暗号化や破壊されたデータのうち、サイバー攻撃から復旧可能なものは55%にすぎず、データ復旧が主要な懸念事項となっている。企業が最新のデータ保護ソリューションに求める最重要項目は「サイバー攻撃対策の戦略内にデータ保護が統合されていることだ」と回答した。
ランサムウェアがDXの最大の障害に
ランサムウェアとそれに対する不安定なサイバーセキュリティ対策の現状は、予算と人的リソースへの負荷が大きく、IT部門にとって優先度の高いものとなっている。このため、本来はデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に割り当てられるITリソースと予算が、サイバーセキュリティ対策に割り振られるようになっているのが現状だ。
コンテナ中心のワークロードに注目が高まる
コンテナ、特に「Kubernetes」は、5年前のSaaSや15年前の仮想化の初期導入層に見られたようなデータ保護戦略の格差がありながら、主流の生産プラットフォームのあらゆる特性を示している。
回答企業の52%は現在コンテナを実装しており、40%はコンテナの導入を計画している。だが大多数の組織は、ワークロードそのものを総合的に保護するのではなく、基盤となるストレージを保護するだけにとどまっている。Veeamによれば、これは新しい生産プラットフォームが主流となり、従来の保護方法では不十分であることが認識された際に、包括的な保護を実現するためにサードパーティー製のバックアップツールを使用する機会が生まれた場合によく見られる現象だ。
Veeamのダニー・アラン氏(最高技術責任者(CTO) 兼 製品戦略担当シニアバイスプレジデント)は調査結果から「IT部門の決定権者は二重の課題に直面している。1つ目は複雑化するハイブリッドIT環境の構築とサポートで、2つ目はサイバー攻撃の頻度と巧妙さが増加していることだ。これらは、さまざまなトラブルから事業を守り、回復する方法を考えるリーダーにとって大きな懸念事項となっている。従来のバックアップアプローチでは、IaaSやSaaSからコンテナに至るまで最新のワークロードに対応できず、最も必要なときに復旧に時間がかかり、ビジネスの信頼性が低下する結果を招く恐れがある。これがサイバーレジリエンス戦略を検討するITリーダーの頭を悩ませており、先進的データ保護が必要とされている背景だ」とコメントした。
関連記事
- ベリタスの「Autonomous Data Management」 日本企業のデータ課題をどう解決するのか
DX(デジタルトランスフォーメーション)の広がりを受けて、データ活用に取り組む企業が増えている。一方でデータの保護や管理は複雑化しており、多くの企業が頭を悩ませている。企業が持つ課題の解決策と、ビジネスをサポートするサービスを聞いた。 - 宮本武蔵と孫子に学ぶ、セキュリティアプローチの極意
サイバー攻撃が激しさを増す今、企業には新たなセキュリティアプローチが求められている。ガートナーの礒田氏が目指すべき方向性と今後需要が増すセキュリティトピックを語った。 - 企業のサイバーレジリエンス状況を可視化 HISOLが現状分析サービスを開始
日立ソリューションズは企業の事業継続を支援する「サイバーレジリエンスソリューション」を提供する。第1弾として、複数の観点から企業のサイバーレジリエンスの現状を評価して、改善を支援する現状分析サービスを開始する。 - イミュータブルなストレージへのバックアップはランサムウェア対策のとりでになるか? 調査の教訓
ランサムウェア対策に対策した「賢いランサムウェア」が登場したことで、セキュリティ担当者は新たな対応策を検討しなければならなくなった。イミュータブルなバックアップストレージはその答えになるだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.