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日本マイクロソフトの“5つの取り組み”は真のDXを実現するか(1/2 ページ)

Microsoftは「Do more with less」を掲げ、企業のDX推進に取り組んでいる。これを達成するには5つの観点で取り組みが必要なようだ。

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 日本マイクロソフトは2023年1月23日、「Microsoft Cloud」の事業戦略について説明会を実施した。同説明会では、日本マイクロソフトの岡嵜 禎氏(執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長)が「Do more with less」(より少ないリソースでより多くのことを実現)を実現するためのクラウド戦略について、吉田雄哉氏(マイクロソフト テクノロジー センター センター長)が新たな「マイクロソフト テクノロジー センター」(MTC)について解説した。

Microsoftが他社に差をつける”5つの取り組み”


日本マイクロソフトの岡嵜 禎氏

 岡嵜氏は説明会の冒頭で「クラウド&ソリューション事業本部はMicrosoft Cloudのスペシャリストとして、あらゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)テーマに最適なソリューションを提案する。Microsoft Cloudでは『Infrastructure』『Digital and app innovation』『Data and AI』『Modern Work』『Business application』『Security』の6つの領域でサービスを提供し、全てに『Support Services』を用意している。それぞれの領域のエキスパートがソリューションやテクノロジーの観点からクラウド適用の推進を支援する。専門性を生かしてサポートしながら、ユーザーやパートナーと協力して仕組みづくりを推進し、それらの体験を他にも共有することでユーザーのDXを加速する」と話した。


図1 クラウド&ソリューション事業本部の役割(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 「われわれの強みは実際にソリューションを持っていることだ。それらをユーザーに見せることで"実感"を持ってもらえる。また、Microsoftもクラウドビジネスに転換するためにDXを推進してきた。ここで学んだノウハウをユーザーに提供できるのも強みだ。Microsoft Cloudを通じて生産性を向上し、ユーザーが『最も重要なこと』に時間を割けるよう支援する」(岡嵜氏)

 同氏は、Do more with lessの達成に向けて「データドリブンと業務最適化」「自動化+AI(人工知能)でより効率化」「開発者向けプラットフォームでイノベーション創出」「仕事のやり方を変革し従業員を再活性化する」「あらゆるものや人、場所を保護する」という5つの観点から説明した。

データドリブンと業務最適化

 岡嵜氏は「データドリブンと業務最適化」を解説する上であるデータを見せた。同データは、「データドリブン経営をしている企業の54%が売上増加」「製品の市場投入までの時間が44%削減」「顧客満足度が62%向上」「増益効果が54%に達している」ということを表したものだ。同氏はこれに対して「データドリブン変革は大きなメリットを持つ。一方、データ活用は道半ばの企業も多く、その理由には『データの分散』『人の連携不足』『仕組みをビジネスに活用できていない』などがある。日本マイクロソフトはこれらの課題を克服してデータ活用の支援する」とコメントした。


図2 岡嵜氏が見せたデータ(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 データ活用の支援は、データレイクとデータウェアハウスのメリットを融合する「最新のデータアーキテクチャ」に加え、全ての分析を一つのオープンなプラットフォームで活用可能にする「データチームのコラボレーション」、データネイティブプラットフォームでエンドトゥエンドのML(機械学習)ライフサイクルを管理する「データ+AIを活用したイノベーション」の3点を通じて実施する。

 これを実現するのが「Microsoft Intelligent Data Platform」であり、データの蓄積から分析、活用、AI利用、データガバナンスまでをシームレスに融合し、データ活用を迅速に実現する。

 岡嵜氏は横河電機のデータ活用事例を紹介した。

 横河電機はITとOT(Operational Technology)のデータを統合するために「Microsoft Azure」(以下、Azure)を採用し、「Azure Databricks」や「Azure Synapse Analytics」「Microsoft Purview」を活用して新たなモノづくりに挑んでいる。

 「Microsoft Purviewなどを使えばデータの統合だけでなく、『データがどこで発生してどう使われたか』を管理できる。また、『データカタログ』機能を使えば、必要なデータがどこにあるかを迅速に検知できる」(岡嵜氏)


図3 横河電機の事例(出典:日本マイクロソフト提供資料)

自動化+AIでより効率化

 「自動化+AIでより効率化」について岡嵜氏は、「AI活用には、『Microosft製品にAIのケイパビリティを組み込む』方法と『ユーザーの業務やデータにAIを活用してビジネス革新を起こす』という2つの方向性がある」としながら、「そこで『Azure AI』が貢献する」と強調した。

 Azure AIでは、MLサービスの「Azure Machine Leaning」、ホリゾンタル型でカスタム可能な学習済みAIモデル「Azure Cognitive Service」、業務シナリオに特化した「Azure Applied AI Service」を提供しており、岡嵜氏は「ユーザーのAIの成熟度や活用方法に合わせてさまざまな提供形態を用意している。Azure AIのサービスを組み合わせれば、業務やビジネスプロセスにAIのケイパビリティを反映できる」と解説した。


図4 Azure AIの概要(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 岡嵜氏はメタバースにも触れ、「蓄積されたデータやIoT(モノのインターネット)、デジタルツイン、AIといった新たなテクノロジーが組み合わさり、メタバースの世界が構築される。川崎重工や北海道電力は業務のなかでメタバースを活用しており、もはや未来の話ではない」とした。

 日本マイクロソフトは2023年1月23日から、「Azure OpenAI Service」の一般提供を開始しており、岡嵜氏はこれについて「OpenAIが開発、学習させた大規模言語モデルである『GPT-3』『Codex』『DALL・E』などを、Azureのマネージドサービスとして利用できる。わずか数分で利用可能で、事業規模にあわせてスケールできる。また、エンタープライズレベルのセキュリティも確保している」と述べた。

開発者向けプラットフォームでイノベーション創出

 「開発者向けプラットフォームでイノベーション創出」について岡嵜氏は、「クラウドを活用してアプリ開発者の生産性を高めるのがMicrosoftの強みだ」と切り出し、「アプリのモダナイズについては、仮想マシンやコンテナ、サーバレス、ローコードといったあらゆるニーズに対応できる。しかし、DX推進では『いかに生産性をあげて開発できるか』が課題になる。Microsoftは開発者向けテクノロジーを提供しており、開発者の生産性向上に役立つ」と続けた。

 MicrosoftはAzureや「Microsoft Visual Studio」「Microsoft Power Apps」「GitHub」を通じて開発者を支える開発プラットフォームを提供しており、岡嵜氏は「これらの開発ツールを組み合わることで、開発プロジェクト全体の10〜20%を占めるインフラ開発はもちろん、多くの比重を占めるアプリ開発のスピードアップにも貢献できる。これは日本のDXを変える重要なポイントになる」とした。

 同氏は説明の中で開発プラットフォーム「Microsoft Power Platform」を取り上げ、「Microsoft Power Platformは統合型ローコード/ノーコード開発ツールであり、ビジネスサイドを中心に利用される。内製化のためにエンジニアを育てようと思っても簡単ではない。ローコード/ノーコード開発ツールはプログラム経験がなくてもアプリ開発できる」と話した。


図5 Microsoft Power Platformの概要(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 岡嵜氏は市民開発とプロ開発が連携している事例に、東京メトロにおける線路設備の異常検知ソリューションを挙げた。

 「市民開発とプロ開発が融合した『フュージョンデベロップメント』が増えている。東京メトロは線路の異常検知にAIを活用しており、ここはAIのプロ開発者が担当する。パラメータの入力部分などは、現場を知る担当者がPower Appsを利用して開発する。われわれはは今後も増加するフュージョンデベロップメントへの対応を加速する」(岡嵜氏)


図6 東京メトロの線路設備の異常検知ソリューション(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 日本マイクロソフトは、Azureへの移行やアプリのモダナイズを進めるためのプログラムとして「AMMP」(Azure Migration & Modernization Program)を展開している。AMMPでは、内製化に向けた支援策としてハッカソン形式でMVP(Minimum Viable Product)構築を行う「Azure Light-Up」や、アプリ開発やデータ組織づくり、人材育成、環境構築までを一気通貫で実施する「Cloud Native Dojo」、3日間で一連の分析業務のフローを体験する「Open Hack」、テーマ選定からデータ準備、モデル作成、デプロイまでを実施する「Data Hack」などを提供する。

 その他にも、開発者や市民開発者、データサイエンティストなど4000人以上が参加して経験やノウハウなどを共有するコミュニティー「MICUG」(Microsoft Cloud Users Group for Enterprise)などもある。

仕事のやり方を変革し従業員を再活性化する

 「仕事のやり方を変革し従業員を再活性化する」という4つ目の観点に対して、岡嵜氏は「日本マイクロソフトも働き方改革を推進してハイブリッドワークを実践している。そのノウハウを提供する」と述べた。その背景には、同氏が話した「今後も柔軟な働き方を希望している従業員が73%」「オフィスで同僚とコミュニケーションを取りたいという声が84%」というデータが大きく関わっている。

 日本マイクロソフトは全ての会議室で「Microsoft Teams Rooms」を活用したハイブリッドミーティングができ、ハイブリッドコラボレーションのハブに「Microsoft Teams」を活用している。日本マイクロソフトの本社では、Teams電話を活用した外線通信サービスやMicrosoft Teams Roomsでの会議などを体験できる。

 「言葉や気合いだけでハイブリッドワークを実現するのではなく、仕組み化することが重要だ」(岡嵜氏)


図7 日本マイクロソフトのハイブリッドワークの概要(出典:日本マイクロソフト提供資料)

あらゆるものや人、場所を保護する

 5つ目の観点である「あらゆるもの、人、場所を保護する」について岡嵜氏は、「セキュリティを確保することが大切であり、これはいつの時代でも最優先事項だ」と前置きし「マルチクラウド環境やリモートワーク、規制の厳格化などの要因も絡んで、サイバー攻撃は巧妙化している。セキュリティの最前線にいるMicrosoftはこうした課題に強みを生かせる」とした。

 Microsoftには世界で8500人のセキュリティエキスパートが在籍しており、120カ国78万5000社を保護している。岡嵜氏によれば、毎日43兆のシグナルを分析しており、2022年には700億のサイバー攻撃を阻止したという。

 「セキュリティソリューションを提供するだけでなく、”ユーザーと一緒に考えること”に注力している。『Microsoft Cybersecurity Reference Architecture』(MCRA)では『ゼロトラスト環境下やマルチクラウドにおけるセキュリティをどうするか』といったノウハウを公開したり、ワークショップを開催したりしている」(岡嵜氏)

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