「ホワイト物流」を実現できるか 物流の「2024年問題」について、富士通に聞いてみた【前編】:【特集】物流Techのいま(2/2 ページ)
物流業界における人手不足をはじめとする問題がより深刻化する「2024年問題」の“到来の年”が間近に迫っている。問題の解決にITはどのように貢献するのだろうか。富士通に現状の課題と「2024年問題」への取り組みを聞いた。
荷主企業の課題
ここから荷主企業、物流企業が抱える課題を個別にみていく。なお、荷主企業は製品の配送の一部、あるいは全てを物流企業に委託する企業を、物流企業は荷主企業から製品の配送を受託する企業を指す。これまでみてきた物流業界全体の課題が生まれた土壌をみることで、解決策の糸口が明らかになるだろう。
「物流会社に配送を委託する荷主企業の中には拠点ごとに別のシステムが稼働しているケースもあり、これがデータを一元化する際のハードルになっています」
また、荷主企業の中には自社の物流全体を物流会社に委託する企業もある。そうした企業の中には、物流がブラックボックス化し、荷主企業自身がどの製品がどのように運ばれているかを把握できていないケースもある。「荷主企業の最大の問題は『可視化』できていないことにあります」と横山氏は強調する。
では、「可視化」のために荷主企業は何をすべきか。「今、荷主企業の中でシミュレーションニーズが高まっています」と横山氏は話す。トラックの配車シミュレーションもその一つだ。「シミュレーションを通じて荷主企業自身が輸送実態を可視化して課題を明確化することで、自社内で改善する、または、委託先の物流会社に相談するなど改善策の実行にもつながります」
物流企業の課題
次に物流企業における課題をみてみよう。
「物流業務のデジタル化が特に遅れています。荷主企業からFAXやメールで指示が届くため、デジタル化が難しいのです。その結果、配車専任者の属人的なノウハウで配車計画を行う企業があります」と横山氏は指摘する。「デジタル化を進める企業でも『Microsoft Excel』などによる計画管理にとどまり、全面的にデジタル化された物流システムの利用には至っていない企業も多く存在します」
今後目指すべき姿とは
ここまで見てきたように、荷主企業・物流企業ともにデジタル化が進んでいない企業が多い。デジタル化が進まず、データが一元化されていないことでドライバーやトラックなどの既存のリソースを十分に活用できていないことはそれぞれの企業の損失になるだけではなく、物流業界が目指す「あるべき姿」の実現も遅らせるようだ。
物流業界は現在、何を目指しているのか。
横山氏は「物流業界が目指すのは、業界や業種が連携、協力して全体を最適化することです」と語る(図表3)。
最終的に目指すのはインターネット通信における「パケット」交換の仕組みを、物流に応用することで物流の在り方を変革する「フィジカルインターネット」の実現だ。経済産業省によると「回線を共有した不特定多数での通信を実現する考え方」を物流に応用するもので(経済産業省「フィジカルインターネット・ロードマップを取りまとめました!」)、実現のためには物流に関わる複数の企業の協力が欠かせない。
この「あるべき姿」に対して、富士通は現在の物流業界は「企業内努力による最適化」「業界連携、業種連携」の段階にあるとみている。
後編では、物流業界が抱える課題に対する富士通の取り組みを紹介する。
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