AWS SimSpace Weaverの発表から約4カ月 担当者に疑問を聞いた
AWS re:Invent 2022で発表されたAWS SimSpace Weaver。メタバースに似たサービスとも認識されるがどのような違いがあるのだろうか。日本で提供される予定はあるのだろうか。
Amazon web Services(以下、AWS)が「AWS re:Invent 2022」で発表したフルマネージド型コンピュートサービス「AWS SimSpace Weaver」。同サービスは、大規模な空間シミュレーションの開発や運用、実行を支援するフルマネージド型のコンピュートサービスだ。従来、高価なハードウェアを必要としてきた3次元CGの世界を、「Unity」や「Unreal Engine 5」といったサードパーティソリューションも併用して開発し、大規模なシミュレーションができる。都市全体の交通パターン、会場内の人の流れといった動的システムや工場フロアのレイアウトなどの物理空間の可視化し、それぞれのオブジェクトデータ発生ポイントとして連携させた上で時系列の状態推移を把握することも可能だ。
同サービスは世界でどのように活用されているのか。日本国内のリージョンでも一般提要されるようになるのか。AWS SimSpace Weaver担当ディレクター兼ゼネラルマネジャーのラーフル・タッカル氏に聞いた。
AWS SimSpace Weaverの発表から約4カ月 担当者に疑問を聞いた
AWS SimSpace WeaverがAWS re:Invent 2022で発表されてから約4カ月が経過した。サービス発表後のユーザーの反応について、タッカル氏は「私たちのユーザーはフルマネージドサービスとして提供されるAWS SimSpace Weaverのようなサービスを予想していなかったと思います。さまざまな事例も誕生し、注目度は非常に高まっています」と振り返った。
タッカル氏は取材の中で「自然災害などにも今後、より活用されていくでしょう」と話したが、地震や台風などさまざまな自然災害が発生する日本においてはいまだに国内リージョンにおけるサービス提供はない。この点についてタッカル氏も同意した上で「できるだけ早く提供開始したい」と語った。
AWS SimSpace Weaverは複雑で動的な3次元シミュレーションが可能になることから、さまざまな領域での活用が期待される。取材時にタッカル氏はDuality Roboticsの事例に言及した。同社はAWS SimSpace Weaverとデジタルツインシミュレーターである「Falcon」を組み合わせることで、VRシステムの開発にも利用されるゲーム開発エンジン「Unreal Engine」や「Unity」にもビルトインを可能にした。Unreal Engineが持つエコシステムを活用して素早く大規模なシミュレーション環境を構築でき、環境全体を3次元モデル化したシミュレーションを素早く立ち上げられるので、限定的なシミュレーションと比較して精度の高い可視化や分析が可能になる。
メタバースとの違いをどのように捉えているのか
3Dやメタバースといった言葉が近年注目を集めている。これらとAWS SimSpace Weaverはどのように違うのだろうか。タッカル氏は違いについて、以下のように述べた。
「メタバースも多くの人から注目が集まっていますが、AWS SimSpace Weaverはよりインフラストラクチャとしての存在を目指しています。大規模な人流シミュレーションや都市全体を再現の再現などを実現するといった事を実現する基盤に同サービスがあるのです」
タッカル氏はAWS SimSpace Weaverで実現したい未来に「誰しもが容易にシミュレーションできる世界」を挙げた。
「常に私たちは多くのユーザーに使用され、彼らをサポートすることをゴールにしています。テクノロジーが急速に進化しビジネス環境も変化している中で、AWS SimSpace WeaverをはじめとするAWSのサービスは今後もケイパビリティを向上させ、ユーザービジネスの進化を容易にできるように取り組んでいきます」(タッカル氏)
関連記事
- JPXがAWSでプロジェクトを成功に導く 金融業界におけるハイパースケーラーの勝負はAWSが一歩リードか
クラウド活用が進む金融業界はクラウドベンダー各社にとっては落とせない業界の一つだ。本稿はAWSの取り組みとJPXの事例を紹介する。 - AWSとHugging Faceが提携 より高速で安価なジェネレーティブAIの導入を実現するか
大規模言語モデル「BLOOM」を開発しているHugging FaceとAWSが提携した。これにより、ジェネレーティブAIの導入を早期に低価格で実現できるという。 - AWSのパートナー施策から浮かび上がった「ユーザー企業の課題」とは DX推進を阻む“2つの課題”への処方箋
AWSジャパンのパートナー施策には「顧客が抱える課題を解消するために何ができるか」という同社の姿勢が打ち出されている。同施策から浮かび上がってきたDX推進企業の課題と対策とは――。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.