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AWSのパートナー施策から浮かび上がった「ユーザー企業の課題」とは DX推進を阻む“2つの課題”への処方箋Weekly Memo(1/2 ページ)

AWSジャパンのパートナー施策には「顧客が抱える課題を解消するために何ができるか」という同社の姿勢が打ち出されている。同施策から浮かび上がってきたDX推進企業の課題と対策とは――。

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 「Partnership is the highest level of customer obsession」

  Amazon Web Services(AWS)の日本法人アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)で執行役員パートナーアライアンス統括本部長を務める渡邉宗行氏は、同社が2023年3月16〜17日に開催したパートナー企業向けの年次イベント「AWS Partner Summit Japan 2023」の初日の基調講演でこう強調した。


AWSジャパン 執行役員パートナーアライアンス統括本部長の渡邉宗行氏

パートナー施策から「ユーザーの課題」が見えてくる

 さしずめ「徹底した顧客起点のパートナーシップ」といったところか。これがAWSのパートナー施策におけるスローガンだ。

 パートナー施策はベンダーとパートナーの間接販売におけるやりとりを指すが、AWSの場合はそれとともに「ユーザー(顧客)が抱える課題を解消するために何ができるか」というスローガンに基づく姿勢を明確に打ち出している。言い換えれば、AWSのパートナー施策からユーザーの今の課題が浮かび上がってくる。筆者はかねてAWSのパートナー施策に注目してきたが、その理由は同社のこうした姿勢にある。

 今回のイベントでAWSジャパンが取り上げたのは、クラウドを活用してDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しているユーザー企業や組織における課題と対策だ。本稿では「IT人材不足」と「内製化」に対する同社のパートナー施策に注目したい。

 なお、基調講演後、説明役の渡邉氏および執行役員パブリックセクター パートナーアライアンス担当の大場章弘氏に個別取材したので、そこでの発言も以下で紹介する。

日本のIT人材不足をどう解決するか

 まずは、IT人材不足について。DXを推進する日本企業では今、IT人材不足が深刻な課題となっている。渡邉氏はその大きな要因として、「日本ではIT人材の多くがユーザー企業ではなく、IT企業に在籍していること」を挙げた。

 図1は日米の企業におけるIT企業とユーザー企業に在籍するIT人材(エンジニア)の割合の違いを示したグラフだ。日本はIT企業76%、ユーザー企業24%なのに対し、米国はIT企業35%、ユーザー企業65%と、ほぼ逆の割合となっている。しかも同氏によると、日本のIT企業におけるIT人材の割合はここ2年続けて増加傾向にあるという。こうした状況で日本のユーザー企業がDXを推進するためには、IT企業に在籍するIT人材を活用することが「現実的な解」(渡邉氏)となるわけだ。


図1 IT企業とユーザー企業におけるIT人材(エンジニア)の割合の日米比較(出典:「AWS Partner Summit Japan 2023」基調講演の提示資料。情報処理推進機構の「IT人材白書」「DX白書」を基にAWSジャパンが作成)

 そこでAWSジャパンがここ数年注力しているのが、ユーザー企業のAWSクラウドをベースとしたDX推進を支援するためのパートナー向けトレーニングだ。最新版で目を引くのは、日本オリジナルのトレーニングが数多くあることだ(図2)。渡邉氏によると、「お客さまの要望を受けたパートナー企業の声を反映して内容を拡充している。日本では『お客さまへの提案力を磨きたい』との声に応えて『実践提案道場』といったベタな名称のコースも設けている」という。一方で、AWSがグローバルで展開し始めたAWSクラウド総合学習サイト「AWS Skill Builder」のコンテンツも新たに加わった。これはAWSに関するスキル獲得のハードルを下げるのが狙いだ。


図2 最新のAWSパートナー向けトレーニングの概要(出典:「AWS Partner Summit Japan 2023」基調講演の提示資料)

 AWSジャパンは上記のようにパートナー企業のIT人材育成に注力してきた。加えて2022年からはIT人材の派遣サービスを行う企業との協業も進めている。しかし、ユーザー企業のIT人材不足は依然として深刻だ。そこで同社は今回、パートナー企業のパートナーに対してもIT人材育成の支援を始めた。図1のグラフでいえば、パートナー企業のパートナーもIT企業なので、直接のパートナーと連携しながら支援する範囲を広げていく構えだ。

 「お客さまのIT人材不足の解消に向けてやれることは精いっぱいやっていく」(渡邉氏)というのが、同社の姿勢だ。

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