生成AIが企業の人材活用にもたらすインパクトとは――データサイエンティスト協会の講演から探る:Weekly Memo(1/2 ページ)
「ChatGPT」をはじめとする生成AIは企業の人材活用にどんなインパクトをもたらすのか。生成AIを使いこなすために不可欠のものとは。データサイエンティスト協会の講演から探る。
企業は「ChatGPT」をはじめとする生成AI(人工知能)をどのように採り入れていけばよいのか。人材活用においてどのようなインパクトがあるのか。
こうした疑問に対し、データサイエンティスト協会が2023年5月30日に都内ホテルで開催した設立10周年記念イベントの講演で興味深い話を聞いたので、今回はその内容を取り上げたい。
生成AIを使いこなすのに最も必要なのは?
データサイエンティスト協会は「社会のビッグデータ化に伴い重要視されているデータサイエンティスト(分析人材)の育成のため、その技能(スキル)要件の定義・標準化を推進し、社会に対する普及啓発活動を行う。分析技術認定(レベル認定)などの活動を通じて、分析能力の向上を図るための提言や協力を惜しまない支援機関として、高度人材の育成とデータ分析業界の健全な発展に貢献する」ことを掲げた一般社団法人だ(図1)。
2013年5月の設立以来10周年を迎え、2023年5月末時点で119社14団体の法人会員と2万人を超える一般(個人)会員が参画し、図2に示すような活動実績を上げてきた。
同協会の代表理事を務める高橋隆史氏(ブレインパッド 社長 執行役員 CEO《最高経営責任者》)は設立10周年に当たって、「これまでの10年は、データサイエンティストの重要性と正しい理解を社会に啓発してきた。これからも引き続き、データサイエンティストをエンパワーメントする機関として注力していきたい」とあいさつした(写真1)。
講演には、高橋氏とともに、同協会の理事を務める樋口知之氏(中央大学理工学部 教授)および中林紀彦氏(ヤマト運輸 執行役員DX《デジタルトランスフォーメーション》推進担当)が座談会形式で登壇した。
以下に、生成AIを巡るやりとりを筆者なりにエッセンスを抽出してまとめた(敬称略)。
高橋 樋口先生は「ChatGPT」をはじめとする生成AIのインパクトをどのように見ておられるか。
樋口 教育現場は今、ChatGPTの出現で大混乱している。教える側だけでなく学生も既に使っているので、さまざまな対策について走りながら考えている状態だ。ChatGPTをはじめとする生成AIの大きなインパクトとして挙げられるのは、ポジティブな面で言うと、こうしたツールをうまく使いこなせば自分自身のスキルアップにつなげられることだ。
私が知る企業の多くは、生成AIの活用も踏まえた上でDXのための内製化に力を入れている。この動きは、生成AIが内製化にも効果的だということを企業として理解していることを示している。こうした企業とそうでない企業の競争力の差は、これからさらに大きくなっていくのではないか。
高橋 個人のスキルアップという観点でも生成AIの使いこなしによって格差が出てきそうな……。
樋口 ChatGPTをうまく使いこなせれば、それが自分自身のスキルになる。さらに使いこなしのレベルが高まれば、スキルもどんどん上がる可能性がある。ただし、ChatGPTをうまく使いこなすためには、ChatGPTがアウトプットした内容をチェックできるだけの知識やスキルが必要となる。その知識やスキルの中で最も必要なのは何かと言えば、基礎だ。すなわち、どんな領域でも基礎となる知識やスキルを持っている人であれば、ChatGPTをうまく使える可能性が高くなる。とはいえ、基礎の知識やスキルを習得するにはそれなりに時間がかかる。そこが悩ましい問題として今後、浮上するかもしれない。
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