日立はなぜ「Lumada」事業に注力するのか――投資家向けイベントから探る:Weekly Memo(2/2 ページ)
日立製作所はなぜ「Lumada」事業に注力しているのか。今、どんな取り組みを行っているのか。これからどう進めていくのか。同社が開いた投資家向けイベントでの最新情報から探ってみたい。
将来的にLumada事業比率は70〜80%に達する可能性も
日立のLumada事業はどんな市場に注力しているのか。この点については、DSSセクターを率いる徳永氏が次のように説明した。
「日立が持つIT、OT、プロダクトの優位性を最大限に発揮できる領域に注力している。具体的にはエネルギーや交通・物流、金融、政府・地方自治体、通信・メディア、製造といった6つの領域だ」
図4は、その6つの領域におけるグローバルでの2024年のDX市場規模や、2022年から2024年までの年平均成長率を示したものだ。
では、Lumada事業の成長計画はどうなのか。これについては、CFOの河村氏が図5を示しながら次のように説明した。
「2022年度〜2024年度までの中期経営計画におけるLumada事業の売上高の成長は今のところ年平均成長率15〜20%を見込んでいる。この数字は、同時期のグローバルDX市場成長率として予測されている17%程度を射程に入れたものと認識している。また、棒グラフは全体の売上高に占めるLumada事業の割合を示したもので、2024年度には33%、すなわち3分の1を占める見込みだ。さらに、棒グラフの一番右側は事業年度を示していないが、ゆくゆくは50%を超え、場合によっては70〜80%に達する可能性もある。そうなると、Lumada事業は他の事業に比べて利益率が高いので、必然的に全社の利益率も上がっていく。当社としてはそんな成長計画を見込んでいる」
日立がLumada事業に注力し始めたのは、筆者の印象では2016年頃からだ。ただ、従来のIT事業からスライドさせたところもあるので、新規事業ではあるものの、当初から事業規模はそれなりにあった。本連載でもそんな初期の頃の動きについて、2017年6月12日掲載の「その案件はどんな価値を生むのか 日立がIoT事業で大事にしていること」で解説した。また、その2年後の本格展開へ動き出した際にも、2019年6月10日掲載の「“失敗の経験”から生まれた、変化することへの貪欲な姿勢――日立製作所に見るデジタルビジネスの進め方」で当時の動きについて考察した。
そうした経緯も踏まえ、改めて、日立はなぜ、Lumada事業に注力するのか。それは、日立にとってLumada事業がDXへの取り組みそのものだからだ。ITからIoT、さらにはDXへといち早く着目し、しかもそのデジタル技術を各事業領域や地域に社会イノベーション事業として展開していくビジネスとマネジメントに企業の在りようを変革し続けてきた。こうした日立のDXに対する取り組みは、他の企業で業種が異なっていても参考になるところがあるのではないか。
6年前の本連載記事の最後に、「日立のLumada事業は例えば10年後、グローバル企業としてLumadaに社名変更するくらい大きく育つのだろうか」と述べたが、今回の河村氏の説明を聞くと、どうやら全く架空の話ではなさそうだ。日立がこれからLumadaブランドを世の中にどう見せていくか、注目したい。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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