ライセンス料の値上げに不満集中 ガートナーのソフトウェア、クラウド契約に関する調査
ガートナーが実施した調査によると、ソフトウェアやクラウドプラットフォームの契約についてライセンス料の値上げに不満が集中している。ユーザー企業は不満を解消するために何をすべきか。
ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2023年6月28日、国内企業のソフトウェアおよびクラウド契約に関する調査結果を発表した。同調査によると、ソフトウェアやクラウドプラットフォームの契約について「特に不満がない」との回答は20%弱で、80%超が何らかの不満を抱えていることが明らかになった。
値上げに不満集中 ユーザー企業はどうすべき?
ガートナーによると、パッケージソフトウェアやパブリッククラウドプラットフォームの適切な契約交渉について、国内企業から同社への問い合わせが増えているという。
具体的な不満としては「ライセンス、サブスクリプション料金の値上がり」と「サポート料金の値上がり」が最も多い。次いで「サービスレベルが不透明」やベンダーによる「突然、あるいは一方的な契約ポリシーの変更」が挙がった。値上げ(調達コスト増)への対抗策では、「他ベンダーへの移行、移行検討」との回答が最も多く、次いで「納得のいく説明をベンダーへ求める」「価格上昇幅の上限をあらかじめ交渉」が上位に並んだ。
ガートナーの海老名 剛氏(バイスプレジデント、アナリスト)は「昨今はエネルギーコストや人件費といった物価上昇に加え、外資系ベンダーは為替変動の影響を理由にソフトウェアやクラウドプラットフォームの値上げを相次いで発表している。顧客企業側でも交渉力のある専任担当者が時間を割かない限り、価格上昇を抑制することは難しい。対応にはIT部門だけでなくビジネス部門や法務部との協力も不可欠だ」と述べる。
今回の調査結果からは、ITベンダーに合理的な説明を求める以外の対抗策に乏しい半面、十分な説明が得られない場合はITベンダーを変更するという思い切った手段も辞さない顧客企業の姿勢が垣間見えた。
海老名氏は「顧客企業は、物価上昇や為替変動といった値上げ要因について、それぞれの要因がどの程度の値上げにつながったのか、細かな説明を受けるべきだ。実際にこうした追及を諦めないことで、値上げ幅が抑えられる例がある。現在の経済情勢に鑑みて受け入れざるを得ない値上げは受け入れる一方で、正当性のない値上げは拒否する姿勢が大切だ。誠意ある説明を行わない場合には、ベンダー変更もいとわないという、毅然とした態度を示すことも時には必要だ」と指摘する。
ただしガートナーは「ITベンダーを変更したとしても、これまでと同じコスト増の問題に直面する可能性はある」と注意を促す。また、運用、保守プロセスの最適化に時間がかかるアプリケーションソフトウェアや、営業秘密を含む重要データを大量に管理するプラットフォームを移行するには、移行プロジェクトとプロジェクト後の定着化に相当の時間を要する。その結果、DX(デジタルトランスフォーメーション)で求められる迅速性が損なわれるリスクもある。
海老名氏はこの点について「契約の無駄や過剰を省くことはコスト削減への即効性があり、顧客企業主導で進めやすい施策の一つだ。ビジネス部門とIT部門で情報共有する組織文化の醸成や、ソフトウェアやクラウドプラットフォームの利用状況を正確に把握するためのツールへの投資といった社内施策も考えられる。ITベンダー変更の決断は、その他の施策や交渉が全て不調に終わった場合の最終手段と捉えた方が良い」と述べる。
同調査はパッケージ、ソフトウェアのユーザー企業とパブリッククラウドプラットフォームのユーザー企業を対象として2023年4月に実施された。
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