進むクラウド移行とAI利用の影響は? IDCが国内ITインフラ市場を予測
IDCの予測によると、国内ITインフラ市場は2027年まで拡大が続く見込みだ。AIの活用が本格化する中、今後の市場への影響は。
IDC Japan(以下、IDC)は2023年8月10日、国内ITインフラ市場予測を発表した。
国内ITインフラ市場には、国内エンタープライズインフラ(サーバーおよびエンタープライズストレージシステム)市場や国内データセンター向けイーサネットスイッチ市場、国内システムインフラストラクチャソ フトウェア(SIS)市場、国内ITインフラストラクチャサービス市場、国内パブリッククラウド接続用途WANサービス市場、国内パブリッククラウドサービス(IaaS)市場が含まれる。
AI活用の影響は?
IDCの予測によると、国内ITインフラ市場の2022〜2027年における支出額の年間平均成長率(CAGR)は8.4%、2027年の同市場の売上額は7兆6643億円に達する見込みだ。
特にパブリッククラウドサービス(IaaS)は、クラウドマイグレーションの進展やデジタルビジネスへの取り組み拡大に伴って利用が拡大しており、国内ITインフラ市場では最も急速に成長するセグメントになる。2027年の国内ITインフラ市場におけるIaaSの売上額構成比は36.8%と、IDCは予測する。
2022〜2027年の国内ITインフラ市場 売上額予測。2022年は実績値、2023年以降は予測。「Infrastructure hardware」にはエンタープライズインフラおよびデータセンター向けイーサネットスイッチを含む。「Rest of market」にはシステムインフラストラクチャソフトウェア、ITインフラストラクチャサービス、パブリッククラウド接続用途WANサービスを含む(出典:IDCのプレスリリース)
IDCは、IaaSの急成長によって国内ITインフラ市場の市場構造の転換が進むと予測する。
ITインフラストラクチャサービスでは、サービスプロバイダー(SP)向けのコロケーションやエンタープライズ向けのクラウド導入コンサルティングや構築の需要が拡大する見込みだ。
ITインフラのハイブリッド化による運用複雑化の課題が顕在化していることから、SP以外のエンタープライズ向け市場における運用サービス(マネージドサービス)に対する需要も高まると、IDCはみている。
システムインフラストラクチャソフトウェア(SIS)では、セキュリティソフトウェアに加えて、パブリッククサービスの環境を運用、管理するためのシステムやサービス管理ソフトウェアの需要も拡大しており、「FinOps」や「AIOps」などの新しい機能に対する注目度も高まっている。
なお、SISでは、初期費用の抑制や継続的な機能強化やアップデートの提供、ライセンスの可搬性などのメリットから、ライセンスの販売からSaaSやサブスクリプションなどの「リカーリング」モデルへと急速に変化している。
一方で、エンタープライズインフラ(サーバーおよびエンタープライズストレージシステム)やデータセンター向けイーサネットスイッチといったインフラストラクチャハードウェアでは、エンタープライズによる投資が緩やかに減少し、ハイパースケーラーやクラウドサービスプロバイダー、デジタルサービスプロバイダー、通信事業者、マネージドサービスプロバイダーなどのSPによる投資が増加する予測だ。
IDCの宝出幸久氏(Infrastructure & Devicesのリサーチマネージャー)は、「デジタルファースト時代においてビジネス価値を創出するために、多種多様なITインフラの使い分けが進んでいる。今後、AI(人工知能)があらゆるビジネスプロセスに組み込まれる『AI Everywhere(どこでもAI)』化が急速に進むとIDCはみている。生成AIに代表されるAIテクノロジーの活用の進展は、ITインフラに対する新たな需要を大規模に創出すると共に、ITインフラの分散化をさらに進める」と分析する。
そうした市場動向の中、ITサプライヤーに求められるのは「市場構造の転換に対応して事業戦略を再構築すると共に、統合管理の実現や、ITインフラコストの継続的な最適化を実現するFinOpsの実践の支援などを通じて、顧客のデジタルビジネスの継続的な発展を支援すること」だと同氏は指摘する。
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