富士通、NTTデータ、NECの取り組みから探る「ITサービスベンダーはなぜコンサルティングに注力するのか」:Weekly Memo(1/2 ページ)
ITサービスベンダー大手がコンサルティングに注力するのはなぜか、その「現在地」は――。富士通、NTTデータ、NECの取り組みから探る。
日本企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが進むにつれ、それを支援するITサービスベンダー大手各社はITやデジタル技術を活用した製品やサービスだけでなく、コンサルティングにも注力している。なぜか。現状はどうなっているのか。これまでの取材から整理し、考察する。
国内ITサービス市場でコンサルティング会社が躍進
今回、そんな切り口でまとめてみようと思ったのは、IDC Japan(以下、IDC)が2023年7月11日に発表した「2022年の国内ITサービス市場ベンダー別売上ランキング」(注1)で興味深い動きがあったからだ。
同発表によると、2022年の国内ITサービス市場規模は6兆734億円、前年比成長率は3.3%だった。ITベンダー別売り上げ上位5社は、1位から順に富士通、NTTデータ、日立製作所、NEC、IBMとなり、上位5位に入ったITベンダーおよび順位は2021年と変わらなかった。注目すべきは、売上成長率が前年比20%超となったアクセンチュアが前年の8位から6位に浮上したことだ(図1)。
IDCによると、「2017年以降、二桁成長を続けるアクセンチュアは、デリバリー体制の拡大と、ビジネスコンサルティングを起点にシステム構築、運用、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)までエンドツーエンドの全社変革支援を展開し、売り上げを伸長させた」とのことだ。
このランキングは、国内ITサービス市場でコンサルティングが主力のアクセンチュアが躍進していることを示しているが、ITサービスベンダーがコンサルティングに注力するという動きもあるのだ。従って、ITサービスベンダー各社は今、アクセンチュアをはじめとするコンサルティング会社を協業の相手としてだけでなく、競合の相手としても捉えている。
ITサービスベンダーは、コンサルティングにどのように注力しているのか。各社の中期経営計画から、最近の記者会見で経営トップがコンサルティング事業について言及した富士通、NTTデータ、NECの取り組みを以下に紹介したい。
富士通は、2023年4月からスタートした中期経営計画(2023〜2025年度)の重点戦略の1つとして掲げた「カスタマ戦略/地域戦略」の中で、コンサルティングの拡充を挙げている。同社の時田隆仁氏(社長 CEO《最高経営責任者》)は2023年5月24日に行った記者会見で、次のように説明した。
「お客さまの経営課題や事業に関わる社会課題について、お客さまと共に向き合い、デジタル技術によって解決策を提案するコンサルティングを強化していく。(主力ソリューションの)『Fujitsu Uvance』において、ホリゾンタル領域をはじめとするテクノロジー軸のコンサルティングとバーティカル領域をはじめとするビジネス軸のコンサルティングの両輪で、お客さまのあるべき姿の実現に向けて支援していく。そのため、両軸のコンサルティングスキルを持つ人員を現在の2000人から2025年度までに1万人規模に拡充する」
そんなコンサルタントの急増が果たして可能なのか。こう問われると、同氏は次のように答えた。
「コンサルティングのケイパビリティを持つという意味では、例えば、ビジネス向けにはデリバリーのメンバー、テクノロジーについては研究開発に携わるメンバーなど、グローバルで見ると現在6万人の候補がいると考えている。これらの人材のリスキリングやアップスキリングとともに、外部からも優秀な人材を求めて1万人体制をしっかりと作り上げていきたい」(図2)
さらに、富士通のコンサルティング事業で注目すべきは、図2のビジネスコンサルティングの特徴にも記されている「Ridgelinez」(リッジラインズ)の存在だ。富士通が別会社として2020年4月にスタートさせた同社は、DX専門のコンサルティング会社という触れ込みだ。この動きについては、2020年3月16日掲載の本連載記事「トランスフォーメーションをデザインせよ――富士通の新会社にみるDX推進の勘所」を参照いただきたい。
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