「DXで売り上げは増えた?」「ビジネスモデルは改善された?」 DX推進企業の回答は:アンケート調査結果に見る中国企業のDX推進トレンド(2/2 ページ)
多くの企業がDXに多額の資金を投入している。DXの目的として掲げられることの多い、成果創出や今後を見据えたビジネスモデルの転換は果たして実現しているのだろうか? アンケート調査の結果から実態を見てみよう。
「中国企業DX実装の10の方向性」の2020年と2021年の比較
2021年における中国企業DX実装の10の方向性
清華大学グローバル産業研究院は「中国企業におけるデジタルトランスフォーメーション研究報告書(2021)」の調査結果を基に、2021年における「中国企業DX実装の10の方向性」を下表の通りまとめている。
(注1)ここでは、技術を通して人や他部門に活気と価値を与えることを指す。
(注2)ここでは、「企業のDX戦略を企画する力」「各部門の実務の効率化を提案する力」「先進的なDX技術を活用できる力」という3つのスキルの全て、あるいは2つを身に付けた人材を指す。
清華大学グローバル産業研究院は、2020年にも同様の調査を実施し、同年における方向性を10点まとめている。2021年と比較した時にどのような違いがあるのだろうか。
図4 「中国企業DX実装の10の方向性」の2020年と2021年の比較(出典:清華大学グローバル産業研究院「中国企業におけるデジタルトランスフォーメーション研究報告書(2020)」、「中国企業におけるデジタルトランスフォーメーション研究報告書(2021)」)
2020年から2021年にかけて中国企業におけるDX実装の方向性はどのように変化したのか。筆者の視点から分析したのが次の表だ。
図5 中国企業におけるDX実装の方向性 2020年と2021年の比較(出典:「中国企業におけるデジタルトランスフォーメーション研究報告書(2020)」と「中国企業におけるデジタルトランスフォーメーション研究報告書(2021)」を基に筆者が加工)
今回を含め5回の連載で「アンケート調査結果に見る中国企業のDX推進トレンド」として中国企業のDX実装の成功経験を紹介してきた。
「中国には独自の事情があるから、日本に同じように浸透させるのは難しいのではないか」と思う読者もおられるだろう。確かに一理あるかもしれないが、それでも産業によっては日本企業にも応用できることがあると筆者は信じている。
具体的に4点に絞ってキーワードを挙げると次のようになった。
- 脱ガラパゴス:日本国内市場に拘らず、世界的スタンダードに目を向ける
- 非完璧主義:ニッチな高機能を追求しない。条件が不十分な状態でもとにかくやってみる
- スピード重視:DXはデータ量を取ったもの勝ち。使わせないと始まらない
- チャレンジ精神:ベンチャーの誕生を容認する気迫と、ベンチャーを競争で“死なせる”勇気
日本の皆さまからもぜひ意見を賜りたい。
以上をもって、「アンケート調査結果に見る中国企業のDX推進トレンド」の連載を締めくくる。
(注3) 量体裁衣とは、もともとは「体の寸法を測って服を裁断する」という意味。ここでは物事の実情に基づいて臨機応変に意思決定することを指す。
(注4) インボリューションとは「内側に向かう発展」を示す社会的な用語だが、現在の中国では「過度に競争すること」を指すことが増えている。
※「中国企業におけるデジタルトランスフォーメーション研究報告書(2021年)」に回答した企業のプロフィールはこちら
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