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「ほぼ全ての行動の中心がAIになる」 Oracle会長のラリー・エリソン氏が語るAIの未来Oracle CloudWorld 2023

Oracleの会長兼最高技術責任者であるラリー・エリソン氏が「Oracle CloudWorld 2023」の基調講演に出演した。エリソン氏が語る未来のAIと、Oracleが開発した生成AIの強みを届ける。

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ラリー・エリソン氏(出典:筆者撮影)

 Oracleの会長兼最高技術責任者(CTO)であるラリー・エリソン氏は2023年9月19日(現地時間)、「Oracle CloudWorld 2023」(期間:2023年9月18〜21日)の基調講演に出演した。

 「OracleCTOラリー・エリソンが語るOracleの未来像」と題した講演では、Oracleが考える「未来のAI(人工知能)」が語られた。

 クレイ・マグワイク氏(Oracle Cloud Infrastructure開発担当エグゼクティブ・バイスプレジデント)が基調講演で語った、Oracleの生成AIが他社と差別化している点についても合わせて届ける。

ほぼ全ての行動の中心がAIになる

 エリソン氏は冒頭「1年ほど前に登場した生成AIがOracleの全てを変えつつあるのは確かだ」と切り出した。

 「『ChatGPT』は人々にとってもAIの専門家にとっても大きな驚きで、私たちの想像力を搔き立てた。ほとんどのクールな新技術は、国家元首や政府首脳、そして他の職業から注目を集めることはないが、ChatGPTは違った」(エリソン氏)

 そういった中、生成AIの利用可否については議論を呼んでいる。米ハリウッドで起きた脚本家のストライキは、脚本家の作品が生成AIにより流用されることへの懸念によって起きた。エリソン氏は新しい技術に対する自身の考えを語る。

 「全ての新技術は悪用される可能性がある。しかし、私たちの生活をより良くする技術や技術の進歩は、生活をより豊かで快適なものにしてきた。生成AIは、おそらくこれまでで最も重要な新しい技術だろう」

 ChatGPTで使われている大規模言語モデル(LLM)「GPT-3.5」は「GPT-4」にバージョンアップされ、他の企業も画像生成や音楽制作、作詞、プログラミングコードなどを生成できる新たな大規模言語モデル(LLM)を開発した。Teslaは“完全な”自動運転車を予定している。Oracleも同様に、HCMやERP、データベースにおける多くのサービスでAIを実装している。「AIは私たちのほとんど全ての行動の中心的存在になる」とエリソン氏は未来を予想した。


「長時間立っていると家族が心配する」と語り椅子を用意するエリソン氏。単独の講演は70分近くに及んだ(出典:筆者撮影)

Oracleの生成AIはChatGPTとどう違う?

 Oracleは、AIスタートアップCohereの技術を使って生成AIを提供している。これはChatGPTと何が異なるのか。2023年9月20日のマグワイク氏の基調講演から両サービスの違いが分かった。

 まずマグワイク氏は、ML(機械学習)が一般的になった現在、生成AIとの違いについて疑問を投げかけた。

 「MLは何年も前から私たちとともにあったが、多くの点でユビキタスになり私たちは気にしない存在となった。SNSに写真をアップロードしたら空間を認識して友人をタグ付けできる。電子メールのスパムビルダーもMLの素晴らしい例だ。MLが何年も前から存在している今、生成AIが“持っているもの”はいったい何なのだろうか」

 それには複数の要因が組み合わさっているとマグワイク氏は語る。第一に優れたソフトウェアがある。2017年の論文で発表されたトランスフォーマーモデルは、大量のデータを取り込み、そのデータ間の関係を理解することにつながった。またハードウェアのスペックが高くなったことで、帯域幅が上がりレイテンシーが減少した。

 また、まだ幾つかの問題が存在しているとマグワイク氏は指摘する。生成AIの学習データがどこでどのように利用されているかが分からないといった問題だ。マグワイク氏は、そういった問題に対するOracleの取り組みについて語った。

 「カスタマイズされた完全にコントロールされたサービス、それが私たちの新しい生成AIだ。(中略)私たちがこのサービスで重視しているのはデータを管理する方法だ。顧客は自分のデータを完全に管理でき、どのように使用されるかを正確に理解できる」

 生成AIによっては顧客が登録したデータは顧客個別のものにならず、他の利用者と共有される。Oracleの生成AIは、利用者間でデータが共有されない仕組みだ。

 しかし同氏によると、アクセスコントロールの障壁を乗り越えても次の障壁が存在するという。それは「生成AIに対する経験不足」だ。マグワイク氏は経験不足を克服するためには“遊ぶ”ことが重要だと続けた。

 「従業員は新しいトレンドテクノロジーの経験がないため、まずは遊んでみることだ。私たちは何をするか心配するよりも子どものように熱中する必要がある」

 そういった自由に“遊べる”環境を提供するため、Oracleは安全に生成AIを使える場を用意している。その結果、今まで想像もしなかったようなものが生まれることにつながると考えている。

 「アクセス権を手に入れ生成AIを活用する経験を積んだ後の障壁は、生成AIをどうやって既存のアプリケーションに統合することだ」とマグワイク氏は予想した。


マグワイク氏が実施した、ビジネスでAIを活用するデモの様子(出典:筆者撮影)

(取材協力:日本オラクル)

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