「半導体余り」はもう終わり? フォルクスワーゲンが調達戦略を刷新:Supply Chain Dive
半導体不足後に訪れた「半導体余り」の記憶が新しい中、フォルクスワーゲンが半導体をメーカーから直接調達する方針を決定した理由とは。また、大手自動車メーカーが確保に走る「半導体以外」の重要な材料は何か。
コロナ禍で深刻な半導体不足に陥った後、需要が落ち込み、「半導体余り」と呼べるような状況が一時的に訪れたことは記憶に新しい。しかし今になって、大手自動車メーカーのVolkswagenグループが半導体を確実に調達できるよう、戦略を刷新したという。一体、半導体は余っているのか、それとも足りていないのか。Volkswagenグループが従来の仕組みを刷新してまで半導体を重視する理由は何だろうか。
「半導体余り」はもう終わり?
Volkswagenグループは2023年8月第4週、半導体と電子部品の調達戦略を見直し、メーカーからの直接購入に移行すると発表した(注1)。
これまで自動車メーカーはコントロールユニットのような「電子部品」を調達していたが、その部品を何に使用するかはTier1(一次請け)サプライヤーがほぼ自由に決定していた。今後、VolkswagenグループはTier1サプライヤーとの緊密な協力とパートナーシップの下で、どの半導体やその他の電子部品うを使うべきかというグループの調達方法を見直すという。
Volkswagenは、「Porsche」「Audi」「Volkswagen」を含む各ブランドの調達部門と開発部門、部品部門とソフトウェア部門の代表から構成される半導体調達委員会を設立する。
パンデミック時代の半導体不足は自動車業界を震撼(しんかん)させるとともに、調達とサプライチェーン戦略に内在するリスクに注目が集まるようになり、調達戦略の重要性が高まった。Volkswagenは「半導体不足によって2022年の納車台数は7%減った」と2023年初めに発表していた(注2)。
世界的な需要過多の状況が落ち着き、半導体メーカーの生産力を向上したことで半導体不足は緩和されたものの、Volkswagenは将来的に半導体の生産が追い付かなくなる可能性を懸念している。
同社はインハウスにグループ横断の半導体調達委員会を設置することで、「ボトルネックが発生した場合、技術的な代替案をより迅速に特定して実施できる」と、同社の「Škoda」ブランドの調達リーダーで、社内供給セキュリティ・タスクフォースの責任者であるカルステン・シュネーク氏は述べた。
Volkswagenは発表の中で、半導体を「自動車産業において不可欠なもの」とし、「大量生産のための基盤であるだけでなく、イノベーションの推進力であり、新製品を市場に投入するための鍵でもある」と付け加えた。
同社は「多くの自動車メーカーが電気自動車(EV)の生産を拡大するにつれて、半導体は自動車産業にとってさらに重要なものとなり需要も高まるだろう」と指摘した。
自動車メーカーが不足に備えているのは半導体だけではない。大手自動車メーカーは近年、EVの製造に必要な材料の将来的な供給を確保する動きを見せている。Fordはインドネシアのニッケルサプライヤーに投資し(注3)、GM(ゼネラルモーターズ)は硫酸マンガンの新工場に資金を提供して3万2500トンの鉱物を確保した(注4)。
(注1)Volkswagen Group reorganizes semiconductor procurement(Volkswagen Group News)
(注2)Volkswagen Group achieves solid annual results, significant increase in deliveries expected in 2023(Volkswagen Group)
(注3)Ford invests in Indonesia nickel supplier to shore up critical EV battery materials(Supply Chain Dive)
(注4)GM signs deal with Australian company for key battery materials(Supply Chain Dive)
≪(初出)Volkswagen revamps semiconductor sourcing as it eyes future supply
関連記事
- 低迷続く半導体 それでも「最先端技術」に投資するTSMCに“逆風”
慢性的な在庫枯渇から一転、半導体の需要低迷が続いている。各社が設備投資削減に奔走する中、TSMCは未来を見据えて最先端技術への投資継続に踏み切った。しかし、同社の“頼みの綱”は今、逆風にさらされている。TSMCは何を読み間違えたのか。 - SUBARUが脱出した「データの三重苦」 データ基盤統合で生まれた「3つの効果」を紹介
「100年に1度の大変革期」と言われる自動車業界では、業務基盤の強化とDX推進が最重要課題となっている。SUBARUが取り組むデータマネジメントを通じた「データ価値の最大化」とデータ活用推進活動を紹介する。 - 個人情報保護委員会がトヨタを指導 クラウド設定ミスで個人データを漏えいした件
個人情報保護委員会が個人情報を漏えいしたトヨタを指導した。指導内容とは。 - コロナがあらわにしたトヨタの弱み 同社が取り組む「カイゼン」とは
トヨタの在庫戦略はパンデミックの影響は避けられなかったようだ。同社は2023年5月、在庫管理に対するアプローチの一部の見直しを発表した。
© Industry Dive. All rights reserved.