AWSが説く「生成AIをビジネスに生かすための“3つの勘所”」:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業が生成AIを生かすための勘所とは何か。生成AIは企業にとって一体何者なのか。AWSで生成AI事業を担当するバイスプレジデントの発言から解き明かす。
生成AIを使う上で心得るべき3カ条
フィロミン氏の興味深い話は、これだけにとどまらなかった。
会見の質疑応答で、「企業がこれから生成AIを使う上で心得ておくべきことは何か」と問われた同氏は、次のような角度から3つの見方を示した(以下の会話文はフィロミン氏による発言)。
1、全ての問題を解決してくれる魔法のような単一の生成AIは存在しない
「生成AIというと、1つの大きなモデルを使用するイメージがある。しかし、これからはユースケースごとに深く学習した生成AIが求められるようになるのではないか」と、同氏は見る。すなわちそれぞれの利用分野に適した生成AIモデルが使われるようになる。LLMだけでなくユーザーインタフェースなども異なるものが使われるというイメージのようだ。
2、生成AIの活用の仕方において競合他社とどう差別化していくかが、企業の競争力に結びついていく
「これからさまざまな生成AIサービスが出てくるが、それらを企業の競争力に結び付けるためには、個々の企業で採用した生成AIを自ら磨き、使いこなしていかなければならない」
3、生成AIを活用して持続可能なビジネスモデルを築いていく
「自らのビジネスに生成AIを活用してどう収益を上げるか。そのビジネスモデルを成り立たせるだけでなく、それを持続可能な形に定着させられるかが、これから問われる」
これら3つをそれぞれキーワードで表すならば、1つ目は「適材適所」、2つ目は「競争力」、3つ目は「持続可能性」といったところか。筆者はこの回答を聞いて、生成AIに対する課題や注意点というより、「生成AIは企業にとって何者か」をフィロミン氏は述べていると捉えた。その意味で新鮮に感じた、興味深い会見だった。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身
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