対策のヒントは「排出熱」 AIでデータセンターのCO2排出量を削減可能に
IT資産においてもCO2削減の圧力は高まりつつある。稼働状況の監視だけでは対応できないこの問題に、パフォーマンスを維持しながらいかに効率よく電力消費を抑制するかはIT部門にとっても大きな関心事項だ。大手2社がAIを使ったデータセンターのCO2削減で協業する。
NTTコムウェアと日本アイ・ビー・エムは2024年2月6日、AI技術を用いたデータセンター運用の高度化に向けた新たなソリューションとサービスの共創に合意したと発表した。ICT機器の消費電力とCO2排出量をAI(人工知能)を活用して推定し、データセンターの運用効率化と環境負荷低減を実現する。
実証実験を経てAIを使った電力消費量とCO2排出量の正確な推定が可能であることが確認された。この技術は電力消費量の増加が懸念される中、データセンター事業者にとって重要な環境負荷低減の手段となる可能性がある。
AIが変えるデータセンター運用
今回の合意では、日本アイ・ビー・エムの「IBM Maximo Application Suite」ソフトウェアによるICT機器構成管理データ、NTTコムウェアの開発した「Smart Data Fusion」によるデータの集約および算出や排熱やCPU使用率から消費電力とCO2の推定、同じくNTTコムウェアの「4DVIZ」ダッシュボードによる機器の状況を可視化する。異常を検出した場合には日本アイ・ビー・エムの「IBM Maximo Application Suite」を活用した現場作業員の対応開始から完了までの作業と履歴管理などを実施する。
NTTコムウェアと日本アイ・ビー・エムは2023年9~11月にNTTコムウェアデータセンターにおいて、データセンター利用者単位での電力消費量およびCO2排出量の可視化や電力量予測モデルが機能するかの検証を実施した。この実証実験の結果、排出熱の温度から消費電力をAIで推定しCO2排出量の算出などが可能であることを確認したと報告している。
国内データセンターの電力消費量は2030年には2018年の約6.4倍の900億kWhに増えると推計されている。さらに生成AIの普及によりデータ処理量は増大することが予測されており、今後の電力消費量増加は懸念材料になっている。こうした状況にあるにもかかわらず、データセンター事業者には環境負荷低減が求められている。
環境負荷の低減には消費電力の適切な把握が必要となるが、これまではフロアやラック単位での消費電力や発熱量が把握できるのみで、ICT機器ごとや利用者ごとの消費電力を把握することは困難だった。今回の実証実験によって非接触の温度センサーを使って電力消費と強い相関を持つICT機器の排出熱を測定するとともに独自のAIモデルで解析することで電力消費量の推定とCO2排出量の算出が可能であることが確認できたという。
NTTコムウェアおよび日本アイ・ビー・エムはこれらの技術を使うことで次のことが可能になると説明している。
- 利用するハードウェアやソフトウェアの構成を変更することなく運用中のサーバー機器に適用可能
- ユーザーの環境にログイン調査を行うことなくユーザー単位またはサーバー単位でCO2排出量や機器異常の監視と管理を実現
- 簡易な温度センサー設置または収集済みのCPU使用率などから消費電力びCO2排出量を低コストで算出
- 電力消費量やCO2排出量把握に基づく精緻な空調制御による電力コスト削減
データセンターの利用者にとっては、電力消費量やCO2排出量のデータが可視化されることで、具体的なグリーンICTの検討や負荷低減取り組みの効果測定が可能になるとされている。
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