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Microsoft 365のTeamsセット売り中止、裏にあった規制と競合の圧力

Microsoftは、TeamsとMicrosoft 365のセット売りを中止すると発表した。顧客の利便性を追求するためと主張しているが、その狙いは別にあるという。

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CIO Dive

 Microsoftは2024年4月1日から、全ての法人顧客に対して「Microsoft Teams」(以下、Teams)と「Microsoft 365」のライセンスオプションを別々に提供すると発表した(注1)。

 この決定は、クラウドベースのビジネスアプリケーションスイートであるMicrosoft 365と「Office 365」、そしてコラボレーションツールのMicrosoft Teamsに対する、より広範なグローバルライセンスポリシー再編の一環だ。

 2023年7月に欧州委員会は、Microsoftがソフトウェアライセンス慣行に関する独占禁止法に違反しているとし、Microsoftはその翌月に欧州経済領域とスイスでMicrosoft TeamsをMicrosoft 365から切り離した(注2)。

Microsoft 365のTeamsセット売り中止、背景にある圧力とは

 Microsoftは今回の発表で、規制当局の圧力への対応よりも顧客の利便性を強調し、「世界的に一貫したライセンスは顧客にとって分かりやすく、意思決定や交渉のスピードが早くなる」としている。

 2023年、Microsoftのライセンス慣行に対する批判は欧州連合(EU)の枠を超えて広がった。

 同年10月に英国の規制機関Offcomはパブリッククラウドインフラ市場に関して業界全体の懸念を指摘し、競争・市場庁(CMA)に対してさらなる調査を求めた(注3)。

 CMAの広範な報告書にはMicrosoftのライセンス慣行に関する項目が含まれており、「特定の顧客がMicrosoft以外のクラウドインフラで一部のソフトウェア製品のライセンスを展開する能力を制限する」という2019年のポリシー変更を取り上げている。

 Microsoftはハイパースケーラーの市場シェアを巡ってより大きなライバル企業であるAmazon Web Services(AWS)と競っており、同時に台頭するGoogle Cloudの勢力拡大にも対応するなど、クラウドはソフトウェアの混乱に大きく影響している(注4)。

 Microsoftの競合は、このソフトウェアライセンスの問題を攻撃の道具にしている。Google Cloudは、米連邦取引委員会(FTC)がクラウド市場競争に関する公開コメントを求めた際に、2023年6月の回答でMicrosoftの「複雑なライセンス制限の網」を批判した(注5)。後発のハイパースケーラーであるGoogle Cloudは、2023年1月に一部のワークロードのクラウドデータ移行料金を撤廃した際、競合他社に対して「一部の既存プロバイダーは、オンプレミスのソフトウェアにおける独占を活用して顧客を囲い込み、競争をゆがめる制限的なライセンス慣行によってクラウドの独占状態を作り出している」と遠回しに言及している(注6)。

 Microsoftは2023年3月、AWSとGoogle Cloudに続いてデータ移行料金の無料化に踏み切った(注7)。

 新たな法人向けOfficeソフトウェアスイートは、顧客に幾つかの選択肢を与えるものだ。利用者は現在のバンドルを維持するか、1アカウント当たり月額7.75〜54.75ドルのMicrosoft 365パッケージと(必要であれば)1アカウント当たり月額5.75ドルの「Microsoft Teams Enterprise」をオプションメニューで購入できる。

 ソフトウェアライセンスの健全化を目指す団体であるCoalition for Fair Software Licensingのライアン・トリプレット氏(エグゼクティブディレクター)は、「このタイミングでの変更は、規制当局の監視に対するMicrosoftの断片的なアプローチを反映しており、最も圧力を感じている領域に変更を加えている」と「CFO Dive」の姉妹メディアである「CIO Dive」に語った。

 スティーブ・ウェバー氏(カリフォルニア大学バークレー校情報大学院教授)は電子メールで、「これは、Microsoftが当初はEU内の明確な苦情に対応して慣行を変更した後、世界中の慣行を変更するというパターンを繰り返すものだ」と述べた。

 Microsoftの広報担当者は、2024年4月1日に電子メールで今回のTeamsのバンドル販売の廃止の動機について次のように説明した。

 「われわれは2023年、欧州経済領域とスイスのMicrosoft 365とOffice 365からMicrosoft Teamsをアンバンドルするために取った措置を、全世界の顧客に拡大している。これにより、多国籍企業が地域間で購買を標準化したい場合により柔軟に提供し、欧州委員会からのフィードバックにも対応する」

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