2025年、IT投資で企業が優先する項目は? 第1位は費用対効果が全く読めない「あの項目」:CIO Dive
ある調査によると、2025年に多くの企業は高額なコストをいとわず「ある項目」への投資を強化するようだ。現時点で投資対効果が不透明にもかかわらず、なぜ投資意欲が増しているのか。
IT投資の総額は年々増加傾向にある一方で、IT投資の費用対効果が適切かどうかが厳しく問われる場面が増えている。それにもかかわらず、2025年に多くの企業は費用対効果ばかりか、プロジェクトの存続も不透明な「ある項目」への投資を増やす意向だという。どういうことか。
2025年、ITリーダーが最も優先する「ある項目」
IT資産管理およびFinOpsソリューションを提供するFlexera Softwareは、2025年にIT投資で優先事項に関する調査を実施した。同調査は800人のITリーダーを対象としており、調査結果は2024年11月14日に(現地時間、以下同)に発表された。
同調査によって、高額な費用がかかるにもかかわらず、企業のITリーダーは「ある先進技術」への投資を重視していることが分かった。これまで多くの企業がIT支出の抑制に取り組んできたが、先進技術へのキャッチアップの意向がそれを上回る形だ。
Flexera Softwareの調査で、IT投資の優先事項を尋ねる質問に対して「ITコストの削減」(27%)と「セキュリティリスクの管理」(25%)を上回る回答数が寄せられたある項目とは何か。
優先項目の第1位は「AIの導入」で、回答者が約半数が選択した。対前年比で11ポイント増加している。
Flexera Softwareのコナル・ギャラガー氏(CIO《最高情報責任者》)は、「AIは短期的にも長期的にも最も大きな潜在的利益をもたらすだろう。AIプロジェクトには膨大な費用がかかるため、投資効果を把握するだけでなく、主要なビジネス目標の達成に向けたリターンを迅速に実証することがより一層急務になる」と話す。
AIの進歩に追い付こうとする競争は、IT支出を抑えようとする長年の取り組みに真っ向から衝突した。Flexera Softwareの調査によると、回答者の71%が「IT予算の中でクラウドへの投資が大きなウェイトを占めていることを認識している」と答えた。
また、経費管理などのソリューションを提供するTangoeの委託によって市場調査会社Vanson Bourneが実した調査のレポートによると、経営陣がAI技術のビジネス上の可能性に目を付けたことで、企業のクラウド支出は前年比30%増加した(注1)。
AIプロジェクトの3分の1近くが2025年までに中止される
生成AIに対する投資のリターンはまだ明確化されていない。アナリストは「2025年までにAIプロジェクトの3分の1近くがパイロットフェーズで中止される」と予想しているが、それでも企業はひるむことなく取り組みを進めている(注2)(注3)。
ベンダーも強気の姿勢を見せている。ソフトウェア企業は自然言語が利用できるチャットbotやコーディングアシスタント、自律的なAIエージェントといった生成AIを搭載した機能を自社製品に組み込んでいる(注4)。AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft、Google Cloudの上位3社のクラウドプロバイダーは、企業がデータのモダナイゼーションやAI機能の搭載に必要なプラットフォームに目を向ける中、既にIT支出急増の恩恵を享受している(注5)。
この傾向は、主要なビジネスソリューションプロバイダーにも変化をもたらしている。
企業向けソフトウェア大手であり生成AIツールの先駆者でもあるMicrosoftは依然としてトップベンダーの地位を維持している。Flexera Softwareによる調査では、回答者の約3分の2が「IT予算の中で最も大きな支出を占めるプロバイダー」として同社を挙げた。Googleは約50%で2位に浮上し、AWSが38%と続いた。「ChatGPT」を開発したOpenAIは37%で、Flexera Softwareの年次レポートで初めて4位に付けた。
一方、Flexera Softwareが2023年10月に実施した同様の調査では、ベンダーのトップ5はMicrosoft、AWS、Oracle、SAP SE、Salesforceだった(注6)。
「ビッグ5のテック企業の多くがAIに投資しているが、Microsoftは特に積極的だ。OpenAIなどとのパートナーシップや『Microsoft Copilot』のような製品間の統合は、AI競争のトップランナーの地位確立に役立っている」とFlexera Softwareは2024年11月14日のレポートで述べている。
AWS、Microsoft、Google Cloudのハイパースケーラー3社は年間を通じて急増するコンピューティングリソースの使用量に対応するため、AIインフラに数百億ドルを注ぎ込んだ(注7)(注8)。3社はデータセンター構築の資本支出を増やす計画であり、この傾向は2025年まで続くと予想される(注9)。
(注1)AI adoption drives ‘unmanageable’ spike in cloud costs(CIO Dive)
(注2)How costs, ROI shape generative AI adoption plans(CIO Dive)
(注3)How costs, ROI shape generative AI adoption plans(CIO Dive)
(注4)SAP to add generative AI copilot across suite of solutions(CIO Dive)
(注5)Businesses default to cloud for generative AI, accelerate migrations(CIO Dive)
(注6)2023 Tech Spend Pulse(Flexera)
(注7)Data center spending skyrockets as cloud building rush accelerates(CIO Dive)
(注8)Cloud consumption surge strains even the largest hyperscalers(CIO Dive)
(注9)Microsoft runs into cloud constraints as Azure AI business booms(CIO Dive)
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