日立製作所が説く「AIエージェント活用の目的」とは? AI事業のキーパーソンに聞く:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業が複数のAIエージェントを活用する際、問題になるのがそれらをどうマネジメントしていくかだ。日立製作所のAI事業のキーパーソンにその現状や課題、対策、訴求ポイントを聞いた。
日立製作所が説くAIマネジメント対策
AIマネジメント対策について、吉田氏は次のように語った。
「まず改めて強調したいのは、多くの企業で活用されるようになってきた生成AIに比べて、AIエージェントが企業のあらゆる業務にもたらす効率化、さらには自動化へのインパクトは格段に大きいということだ。AIエージェントの活用をマネジメントする上ではさまざまな観点があるが、大きな効果を期待できるので、ぜひアグレッシブに取り組んでいただきたい」
その上で、こう続けた。
「AIエージェントの活用をマネジメントする上では、その根本的なところで“人間とAIの関係”について注視し続ける必要がある。つまり『自分の代理人には相手をはじめ関係する人たちの気持ちに寄り添った存在であってほしい』ということだ。その意味では、AIエージェントの活用は“人間の働き方”の問題でもある。この点をしっかり認識して適用していくことが、AIエージェントの活用として見逃しがちな重要ポイントだと、当社は捉えている」
人の気持ちに寄り添ったAIエージェントの必要性について、吉田氏はコンタクトセンターの事例としてAIが引き起こす課題について図2を示した。
同氏はこれを「人間とAIの関係」と言ったが、人間関係において大事な人それぞれの心理や気持ちをAIエージェントにも配慮させようということだ。すなわち、人間関係にAIをどう組み入れていくかが、これから大きなテーマになっていくかもしれない。
こうしたAIマネジメント対策に向けて、日立としては先に述べたオフィスワーカーにもフロントラインワーカーにも役立つAIエージェントのソリューションを順次提供していく構えだ。さらに同氏は、「当社のAIエージェントソリューションは、すでに当社内で実証済みで、お客さまにすぐに活用していただけるものを提供していく。それができるのは、当社がITベンダーでもあり幅広い分野の製造業者でもあるからだ」とも述べた。
また、競合他社ではAIエージェントサービスのフレームワークをブランド商品化して打ち出しているところもあるが、同氏は「今後、必要があれば当社でも用意するが、基本的に生成AIを業務に活用する取り組みとして、さまざまなサービスを提供するパートナー企業と幅広く連携し、お客さまにとって最適なソリューションを提供することに注力したい」との立ち位置を強調した。
最後に、AIマネジメント対策として、改めて訴求したい点を聞いたところ、吉田氏は「2つ述べたい」として次のように答えた。
「一つは、先にAIエージェントはシステムとして捉えるべきだと話したが、これからまさしくAIマネジメントの問題が現実的になる中で、企業においては改めてIT部門の役割が重要になるのではないか。かつてエンタープライズアーキテクチャ(EA)という概念が注目されたが、AIエージェントの活用に向けては同様の考え方が求められるようになるのではないか」
「もう一つは、企業としてAIエージェントを活用する目的は何なのかを考えていただきたい。先にも述べたように、業務の効率化、自動化による生産性向上が挙げられるが、見方を少し変えると『AIエージェントを活用して業務改革を推し進めよう』との捉え方もある。目的に業務改革を掲げれば、その活動は人間が主導するものとなる。その上で、AIエージェントには大いに働いてもらえばよい。AIマネジメント対策もそんな思いで臨みたいところだ」
AIエージェントを活用して業務改革を推し進める――。筆者はAIエージェントをテーマに取材を重ねてきているが、この目的の表現は新鮮に感じた。「人間主導」なのがいい。そう捉えて取り組む企業が増えることを期待したい。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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