膨らみ続ける国内ITインフラ市場 2029年に3兆円規模を突破する背景
生成AIの導入やクラウド運用の進展が追い風となり、国内ITインフラサービス市場は2029年に3兆円規模への成長が予想される。特に市場をけん引している領域とは。
IDC Japan(以下、IDC)は2025年5月19日、国内ITインフラストラクチャーサービス市場に関する最新の市場予測を発表した。
ITインフラストラクチャーサービスは、企業が活用するサーバ、ストレージ、ネットワークといったITインフラに関連するコンサルティング、設計、構築、運用、保守サービスを含む分野だ。同市場は2024年に2兆2685億円の規模に達し、2029年には3兆674億円に拡大する見込みで、2024年から2029年までの複合年間成長率(CAGR)は6.2%と予測している。
2029年に3兆円規模を突破する背景
本市場では「エンタープライズ」と「サービスプロバイダー」の2つの顧客セグメントが存在し、それぞれの利用傾向に大きな違いが見られる。
近年、インフレや技術者不足の影響により、ITハードウェア価格および人件費が上昇しており、それに伴ってインフラ保守運用サービスの価格も上昇傾向にある。また、クラウドへの移行が一巡したことで、保守サービス市場の縮小傾向にも歯止めがかかっている。
エンタープライズ分野(官公庁、金融、製造、流通など)では、個別にインフラ製品を導入するのではなく、クラウドサービスのインフラ機能を活用する動きが強まっており、インフラコストを抑制できることが理由だ。一方、サービスプロバイダー分野(コンテンツ配信、ソーシャルメディア、ゲームなど)では、ユーザー数の増加に対応するためインフラ投資が拡大しており、支出が増加している。
IDCの予測によれば、2024年から2029年にかけてのエンタープライズ向け市場の年間平均成長率は5.2%で推移する見通しだ。これに対して、サービスプロバイダー向け市場は10.1%という高い成長率を維持する見込みとなっている。
生成AIの活用が進展し、それに伴うAIサーバの導入も進んでいる。IDC JapanのSoftware & Servicesリサーチマネージャーである伊藤未明氏は、「AIインフラの保守運用については、市場が成熟するには至っていないが、今後AIインフラの導入が拡大するにつれて、その保守運用市場も広がる可能性がある」と述べている。
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