IBMがAWSとの連携を強化 watsonxとAmazon Qの統合でAI導入はどう変わる
IBMは、エージェント型AIの導入を加速するツール群を発表し、AWSとの連携を強化した。watsonxとAmazon Qの統合によって業務データの一元活用が可能となり、業種別AI活用が進展する。
日本IBM(以下、IBM)は2025年5月26日、エージェント型AIの導入と運用を支援する新たなツール群と領域特化型の事前構築済みエージェントを発表した。これらは「AWS Marketplace」との連携によって提供され、企業におけるAI導入の容易化を目指す。この連携が企業にもたらす具体的なメリットを解説する。
IBMxAWSのエージェント統合でAI導入はどう変わる
IBMは、AIが自律的に推論、行動、学習する次世代のエージェントとしての役割を担うためにAWSとの連携を強化している。今回発表の新機能には、IBMの「watsonx Orchestrate」とAWSの「Amazon Q インデックス」の統合が含まれている。watsonx Orchestrateは、AIエージェントの構築、展開、管理を支援するIBMのソリューションであり、Amazon Q インデックスは、複数の業務アプリケーションにまたがるデータの集中管理を可能にする。これにより、企業は複数のデータソースにまたがる情報を生成AIに統合的に活用できるという。
人事、営業、調達といったビジネス分野に特化したwatsonx Orchestrateのエージェントに、Amazon Q インデックスが統合されることで、Adobe、Salesforce、Slack、Zendeskなどのアプリケーションから取得した情報に基づいた、よりパーソナライズされたユーザー体験の提供が可能となる。この新しい統合は年次イベント「Think」でプレビューされており、2025年後半に一般提供が予定されている。
watsonx Agentおよびwatsonx Orchestrateが現在、米国、ヨーロッパ、シンガポールでSaaS形式およびAWS Marketplace経由で提供されており、2025年6月にはインドでの提供も開始される見通しだ。
さらにIBMはAIエージェントのライフサイクルを管理するためのガバナンス機能として、「watsonx.governance」に新機能を追加する。これには、AIモデルの透明性確保に向けた包括的な評価、バイアス検出、ドリフト監視などが含まれ、AWS Marketplace経由で提供される予定だ。
この他、IBMはAIを活用した業務変革を支援する「AIインテグレーション・サービス」を設立した。IBMコンサルタントは、各業界の知見とAWS技術に基づく支援を提供し、Agentic Applications向けのテンプレートやAmazon Q、「Bedrock」などのAWSネイティブ技術を活用して、エージェント型AIの展開を支援する。
モデル提供面では、IBMの大規模言語モデル「Granite 3.2」が「Amazon Bedrock Marketplace」および「Amazon SageMaker JumpStart」で利用可能となっている。2025年第3四半期には、Amazon Bedrockの「Custom Model Import」(CMI)を通じて、顧客が独自のモデルをサーバーレスでデプロイ可能となる予定だ。
自動化分野では、IBMのソフトウェアがAWS Marketplaceにおいて提供拡大されている。新たにApptioおよびKubecostのソフトウェアが加わり、さらにHashiCorpの製品も2025年後半に追加予定とされている。また、インテリジェントAPIとエージェントによる自動化を可能にする「IBM webMethods Hybrid Integration」は6月に提供開始予定で、アプリケーションのレジリエンス向上を支援する「IBM Concert」はすでに利用可能となっている。
現在、IBMはAWSを通して89カ国以上に70以上のソフトウェアソリューションを展開しており、2025年7月からは22カ国のリセラーがIBM Partner Plusの一環として、AWS Marketplace経由でIBMソフトウェアを販売可能となる見込みだ。これら一連の発表はIBMとAWSが連携し、企業がAIエージェントを安全かつ効率的に導入・管理し、自動化とAIガバナンスの高度化を図るための取り組みの一環となっている。
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