vSphereを狙う高度なソーシャルエンジニアリングに注意 Googleの推奨対策:セキュリティニュースアラート
Googleは、VMware vSphere環境を標的とした高度なソーシャルエンジニアリング攻撃を確認した。この攻撃は最近活発化している脅威アクター「Scattered Spider」によるものとされており、他の攻撃グループにも手法が波及する可能性があるという。
Googleは2025年7月24日(現地時間)、「VMware vSphere」(以下、vSphere)環境を標的とした高度なサイバー攻撃に関する分析を公開した。同社のThreat Intelligence Group(GTIG)が2025年中頃に検出した一連の攻撃活動について詳細を明らかにした。
vSphereを狙う高度なソーシャルエンジニアリングに注意 Googleの推奨対策
この攻撃は金銭目的で活動する脅威アクター「Scattered Spider」によるものとされている。Scattered Spiderは小売や航空、保険業界など多岐にわたる業界に対して高度なソーシャルエンジニアリング攻撃を仕掛けるグループで、近年注目されている脅威アクターだ。どのような手法を駆使しているのだろうか。
今回の攻撃ではソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性を突くのではなく、ITヘルプデスクへの電話を起点としたソーシャルエンジニアリング手法が多用されていたことが確認されている。攻撃者は、従業員になりすましてヘルプデスクに連絡を取り、「Active Directory」のパスワードリセットを誘導。その後、取得した権限を利用してvSphere中核の「VMware vCenter Server」(以下、vCenter)や「VMware ESXi」(以下、ESXi)ホストへと侵入を拡大させていた。
攻撃の過程ではActive Directoryの管理者アカウントを掌握し、vCenterの管理権限を取得。仮想アプライアンス「vCenter Server Appliance」(vCSA)を再起動してブートローダーを書き換え、rootシェルへのアクセスを得たとされる。加えて、ESXiホストに対しSSHアクセスを有効化し、仮想マシンのディスクを操作。最終的には、Domain Controllerの仮想ディスクを不正に複製し、内部情報の窃取やランサムウェアを実行していた。
同攻撃はエンドポイント型のセキュリティ製品では検出困難なレイヤーで活動している点に大きな特徴がある。一例としてESXiホストにおける攻撃操作は、通常のEDR(Endpoint Detection and Response)製品では可視化できない。また仮想マシンのディスクをオフライン状態で操作することで、内部セキュリティエージェントによる検知を完全に回避していた。
Googleは今回の攻撃に次のような対策を推奨している。
- 電話によるパスワードリセットの禁止: 特権アカウントに対しては、対面または高保証の本人確認を必須とする
- vCenterへの多要素認証(MFA)導入: 特にフィッシング耐性のあるMFA(FIDO2/WebAuthn)を導入する
- vSphere VM暗号化の実施: 仮想ディスクの暗号化により、オフラインでの情報窃取を防止する
- ESXiのrootアカウント無効化: 代替となる「break glass」アカウントの利用を推奨している
- ログの集中収集と相関分析: vCenterやESXi、Active Directory、ネットワーク機器、バックアップソリューションなどのログをSIEMで統合管理する
Mandiantは、今回の手法が他の攻撃グループにも拡散していることに強い警戒を示しており、仮想化環境に依存する企業に対し、今すぐにでもインフラレベルの防御態勢を見直すように促している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
全世界のPCの約4分の1が感染 悪夢のシナリオを回避する方法はあるか?
Munich ReとCyberCubeによる調査では世界規模のマルウェア攻撃が発生した場合、世界中のPCの約4分の1が感染することが分かった。悪夢のシナリオを回避する方法はあるのか。
セキュリティ軽視でIPO延期…… そのとき情シスは何ができたのか?
セキュリティ対策が進まない真因には、投資や人材不足、部門の地位向上など「政治力」の不足で生じる問題が多々存在します。この連載は情シスやセキュリティ部門が従来のコストセンターを脱して価値を発揮するためのアドバイスをお伝えします。
QRコードはもう止めて…… 筆者が「これはいけるかも?」と思う代替策
QRコードを悪用したフィッシング「クイッシング」は遷移先のWebサイトなどを目視で判別できず、不正対策が難しいものです。そこで筆者が考えるQRコードに代わる新たな代替策とは。
有料のウイルス対策ソフトを入れる人は“初心者”? マルウェア対策を再考しよう
インフォスティーラーの脅威が本格化しつつある中、組織と個人ともに改めてマルウェア対策を再考する必要がありそうです。ただ最近、「有料のウイルス対策ソフト不要説」がちらほらと出ているようです。一体どういうことでしょうか。