富士通とNECの最新受注状況から探る「国内IT需要の行方」:Weekly Memo(2/2 ページ)
国内IT需要の今後の動きはどうなるか。モダナイゼーションやAI活用の需要は増えているのか。富士通とNECが発表した直近四半期決算での受注状況と両社CFOの発言から探る。
NEC:「国内受注は前年からの高水準を維持」
NECが2025年7月29日に発表したITサービスにおける第1四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比3%減となった。
業種別では、パブリックが2024年同期比7%増と伸長した一方、エンタープライズは同11%減、子会社他も同7%減となった。エンタープライズの内訳では、金融が同7%減、製造が同2%減、流通・サービスが同19%減と、いずれもマイナスだった(表2)。
ただ、この受注のマイナスには理由があるようだ。同社 取締役 代表執行役 Corporate EVP 兼 CFOの藤川 修氏は、次のように説明した。
「全体で前年同期比マイナスとなったのは、前年同期にエンタープライズ分野で大型案件を獲得したことや法人向けPCの販売機能を移管したことの影響によるもので、これらを除けば前年同期比11%増となり、引き続き高水準を維持している。特にDX需要は堅調に推移している」
業種別には、「パブリックも前年同期に大型案件を獲得したが、自治体の標準化および消防防災の案件が寄与して今期は堅調に推移している。エンタープライズは流通・サービスの前年同期の大型案件獲得の影響を除くと前年同期並みとなり、引き続き高水準を維持している。また、2024年度では大型案件獲得が上期に偏重したが、2025年度は下期に偏重すると想定している。子会社他がマイナスだったのは、構造改革および法人向けPCの販売機能の移管の影響によるものだ」とのことだ。
今後の需要については、「全体として、モダナイゼーションおよびDXの需要には引き続き、力強さを感じている。それは、DXのコンサルティングを提供しているアビームコンサルティングの受注が前年同期比14%増と好調に推移していることからもうかがえる。そうした市場のトレンドは当面、変化はないだろう」との見方を示した。
AI導入で効果が出るかどうか 問われる経営層の「発想」
以上が、両社の直近四半期の受注状況から見た国内IT需要の今後の見通しだ。ご覧いただいた通り直近の第1四半期の国内受注は、両社とも数字上は微増および微減だが、前年から高水準を維持しているというのが実態だ。両社とも好調の要因としてDXおよびモダナイゼーションの需要拡大を上げている。
そうした中で、今回筆者が印象に残ったのは、先に紹介した磯部氏のAIについての話だ。業績の数字の上では、AIはDXやモダナイゼーションに組み込まれるものになるだろうが、今後、どの企業においても事業環境に影響を与えるさまざまなことが起ころうとも、AIを活用していかないと生き残れない時代が来るだろう。
ただ、懸念されるのは、企業がAIを導入してもなかなか効果が上がらないケースが相当出てくるのではないかということだ。例えば、AIエージェントを活用するならば、そのためにデータを整備しなければならないし、使い方によってチームやプロジェクトの在り方をあらかじめ考えておく必要がある。つまりは、AIエージェントを使うことで業務変革を推進するという発想があるべきだ。これはAIという技術ではなく、経営の話であることを、企業は肝に銘じるべきだろう。
ただ、磯部氏が述べた「今後、AIがどれくらいのスピードでどう進化するかは分からないが、現時点でのAIを取り入れるだけでもビジネスに相当の効果を上げられるはずだ」との見方には賛同する。こういう話をCFOが決算会見でするようになったのも印象的だ。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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