グローバルで急拡大する「IT人材派遣市場」 需要の高い人材と理由は?
専門性の高いIT分野では、開発を担う人材が不足している。この状況を受け、IT人材派遣市場は拡大を続け、2030年には3065億ドルに達すると予測されている。IT人材派遣の現状や、需要の高い人材とその理由を解説する。
多くの企業が直面している課題の一つにIT人材の確保が挙げられる。専門性の高い分野では、熟練したIT人材が世界的に不足している。こうした状況を背景に、必要なスキルを持つ人材を柔軟に確保できる「IT人材派遣」の需要が高まっている。
市場調査会社のグローバルインフォメーションが発表した最新レポートは、この市場の成長とその背景を明らかにした。特に需要が高いIT人材とはどのような人材なのだろうか。
IT人材派遣のグローバル市場が急拡大
グローバルインフォメーションは2025年9月11日、市場調査レポート「IT人材派遣の世界市場」の提供を開始した。IT人材派遣の世界市場は2024年に2023億米ドルと推定されており、2024年から2030年にかけての年平均成長率(CAGR)は7.2%、2030年には3065億米ドルに達するとされている。
分析対象セグメントのうち、人材派遣分野のCAGRは8.7%を記録し、2030年には1213億米ドルに到達すると予測されている。常用従業員紹介(リファラル採用)のCAGRは5.0%と推定され、緩やかな拡大が見込まれている。
地域別の分析において、米国市場が2024年に551億米ドルと見積もられている。中国のCAGRは11.5%と高い成長率を示し、2030年までに652億米ドルの規模に達すると予測されている。日本のCAGRは3.5%、カナダのCAGRは7.0%で拡大が見込まれ、欧州においてはドイツのCAGRの4.8%と予測されている。
市場拡大の背景としては複数の要因が指摘されている。第1にサイバーセキュリティ、クラウドコンピューティング、データサイエンス、ソフトウェア開発といった分野において、熟練したIT人材が世界的に不足していることが挙げられる。この人材不足が、外部派遣サービスへの依存度を高めている。第2に、企業はデジタルプロジェクトの迅速な遂行を迫られるが、社内人材の不足に直面しており、柔軟に人材を確保できる派遣サービスを活用する傾向が強まっている。
勤務形態の多様化も市場の拡大を後押ししている。リモートやハイブリッドの勤務環境が浸透し、国境や時差を超えて人材を活用できるようになり、派遣会社はグローバルな人材ネットワークを生かしたサービス提供を進めている。新興企業や中小規模の事業体は、契約ベースの人材派遣を利用することで、常用従業員雇用に伴う固定コストを抑えつつ、高度なスキルを持つ人材を確保している。大規模企業においても、人員削減や事業優先順位の変更といった課題に直面する中、派遣を活用した一時的な人材確保策を構築し、業務継続性を確保している状況だ。
加えて、労働関連法規やデータプライバシー法に関する規制が変化しており、地域ごとの法制度に精通した派遣パートナーとの契約が重要性を増している。ITアウトソーシングやマネージドサービス、プロジェクト型コンサルティングの活用が拡大していることも、多様なニーズに応える派遣モデルの需要を押し上げている。
本レポートは、こうした市場の動向を詳細に分析し、地域、セグメントごとの予測や競合環境についても整理している。IT人材派遣は、グローバルなビジネス環境における技術人材の確保方法を大きく変化させており、その市場力学は今後も注目される分野といえる。
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