「人を置き換えるのではなく“引き上げる”」 Salesforce、AIと人間の協働を支える基盤「Agentforce 360」提供開始:AIニュースピックアップ
Salesforceは、AIと人間が協働する「Agentic Enterprise」を実現するため、新プラットフォーム「Agentforce 360」を提供開始した。CRMや分析基盤を統合し、AIエージェントが業務効率と顧客体験を向上させる。
Salesforceは2025年10月13日(現地時間)、AI時代における新たな業務モデル「Agentic Enterprise」の実現を目的とした新プラットフォーム「Agentforce 360」の一般提供を開始すると発表した。
「人を置き換えるのではなく、能力を引き上げる」 Agentforce 360の思想と機能
Agentforce 360は、人間とAIエージェントを信頼性の高い単一のシステムで統合するプラットフォームだ。従業員がより多くの成果を上げ、これまでにない知性と速度で企業を運営できる環境を実現するという。
「Agentic Enterprise」は、AIが人を置き換えるのではなく、人の能力を引き上げるという思想に基づいている。このモデルでは営業やカスタマーサービス、バックオフィスの各部門が常時AIの支援を受け、業務の抜け漏れを防ぎ、迅速で的確な意思決定を可能にするという。
この取り組みの基盤には、Salesforceが長年にわたり提供してきた顧客関係管理(CRM)やオートメーション、分析などのテクノロジーがある。それらをAIエージェントが活用することで、あらゆる業務フローが知的なプロセスへと転換し、従業員が成果を倍増させ、顧客接点が価値ある体験に変わるとしている。
Agentforce 360の構成要素は主に次の4点だ。
- 「Agentforce 360 Platform」: AIエージェント基盤。会話型ビルダー、ハイブリッド推論機能、音声対応機能などを備える
- 「Data 360」: 統合データ層。AIが文脈を理解するための基盤となる。「Intelligent Context」や「Tableau Semantics」などの機能により、非構造化データや分析結果を意味づけし、AIが深く理解できるようにする
- 「Customer 360 Apps」: 企業活動の記憶や業務ロジックを保持し、販売やサービス、マーケティング、運用といったプロセスをAIエージェントが理解できるようにする
- 「Slack」: 人とAIエージェントがリアルタイムで知識や行動、データを共有しながら協働する対話インタフェースとして機能する
この統合構成により、企業はガバナンスの効いた信頼性のあるデータを基にAIエージェントを展開し、部門横断で人とAIの協働を推進できる。加えて、Salesforceのオープンなエコシステムにより、各業界に特化したソリューションやサービスの拡張も可能とされている。
Salesforceによると、Agentforce 360は単なる実験的なAI導入ではなく、既に同社内で日常的に活用されている。営業、IT、サポート部門で反復的な業務を処理し、従業員が戦略立案や創造的業務、顧客関係の深化に注力できる環境を支えているとしている。
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