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「2年以内にAIで成果を出さないとクビになる」 CIO/CDOへの圧力が増大かAIニュースピックアップ

Dataikuの国際調査の結果から、95%のデータリーダーがAI意思決定の可視性欠如を認め、経営層との認識乖離や責任集中、説明可能性の不足がAI導入停滞の要因となっていることが明らかとなった。

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 Dataikuは2025年10月23日、AIエージェント導入に関する新たな国際調査「グローバルAIコンフェッションレポート:データリーダー編」を発表した。同調査は米国や英国、フランス、ドイツ、アラブ首長国連邦、日本、シンガポール、韓国の大企業に勤務するデータリーダー812人を対象に実施された。

データリーダーの95%が可視性欠如を告白

 同調査から、データリーダーのほぼ全員にあたる95%が、「AIによる意思決定プロセスに関して完全な可視性を欠いている」と認めた。86%は「AIがすでに日常業務に組み込まれている」と認識しているものの、ガバナンスの欠陥や説明可能性の不足、AIへの根拠のない過信といった懸念が依然として存在すると回答した。AIエージェントの承認前に意思決定プロセスを常に提示するよう求めるリーダーは19%にとどまり、52%が説明可能性の懸念を理由にAI導入を延期または中止した経験があると回答した。

 経営層との温度差も浮き彫りとなった。データリーダーの73%が「経営陣はAIの信頼性を本番運用前に確保する難しさを過小評価している」と回答し、68%は経営陣はAIの精度を過大評価していると見ている。また39%は自社の経営陣がAIを真に理解しているとは考えていないと回答している。Dataikuが年初に発表した、CEOを対象とした同レポートにおいて、経営者がAIに強い期待を寄せていたが、データリーダーの現場感覚とは乖離(かいり)があることが示されている。

 調査結果において、AI導入に関する責任の重さが最高情報責任者(CIO)や最高データ責任者(CDO)らデータリーダーに集中している実態も明確になった。「AIの成果によって評価される可能性がある」とした回答者は46%にとどまり、逆に「AIの失敗時に業績悪化の責任を問われる可能性がある」と答えた割合は56%に達した。また60%が、「AIが2年以内に測定可能な成果を出せなければ、自身の職が危うくなる」と危惧しており、職務上の圧力が増大していることがうかがえる。

 AIの性能や信頼性への企業の姿勢についても、慎重な見方が広がっている。調査では59%の企業が、「過去1年以内にAIによるハルシネーションや不正確さがビジネス上の問題を引き起こした」と回答した。82%がAIは上司よりも優れたビジネス分析ができるとしつつも、AIのエラー率が6%を超えた場合には74%が人間の判断に戻す意向を示している。89%の企業は、AIで代替しない業務領域が少なくとも1つ存在するとしており、完全自動化への移行には慎重な姿勢を見せている。

 地域別において、日本のデータリーダーが特に慎重な姿勢を示している。「自社のAIエージェントが基本的な監査を通過する自信がない」と回答した割合は31%で、調査対象国の中で一番高い。また同じく33%はAIが重要な業務決定をする場合、背景を説明できないなら信頼しないと答えており、世界平均の28%を上回った。日本企業はAIの判断に対して説明可能性を強く求め、人間の関与を維持する姿勢が顕著だ。

 同調査では、AI導入の停滞要因として、経営層の楽観的な見方と実務層の慎重姿勢の隔たりも指摘されている。データリーダーの56%がAI戦略の失敗により2026年までにCEOが解任される事態を予測しており、経営判断のリスクが認識されつつある。多くのAIプロジェクトが概念実証(PoC)の段階から進まない背景には、こうした認識のずれがあると分析されている。

 今回の調査は2025年8月20〜29日にかけてオンライン形式で実施されている。対象は年間売り上げ10億ドル以上の企業に所属する経営層(副社長、ディレクター、マネージングディレクターなど)であり、各国のAI導入に姿勢の違いと課題が詳細に分析されている。

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