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MicrosoftとOpenAI、「2032年まで」の新契約 これまでの経緯とユーザーへの影響AIニュースピックアップ

MicrosoftとOpenAIが、関係を再定義する最終契約を締結。一時は緊張関係も報じられた両社の提携は、企業のAI活用に何をもたらすのか。今後の製品開発やユーザーに与える影響を探る。

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 MicrosoftとOpenAIは10月28日(現地時間)、両社の長期的なパートナーシップを再定義する最終契約を締結したと発表した。これにより、Microsoftが持つOpenAIの知的財産権は2032年まで延長される。一時は緊張関係も報じられた両社だが、今回の合意は製品の安定供給と今後の開発ロードマップに大きな影響を与えそうだ。本稿では、これまでの経緯を振り返りつつ、新たな契約がユーザーや開発者に何をもたらすのかを解説する。

AGI条項を巡る対立から一転、長期的な関係を再構築

 2019年にMicrosoftがOpenAIへ10億ドルを出資して以来、両社はAzureを基盤としたスーパーコンピューティング開発や、「GPT-3」の独占ライセンス契約などで協力関係を深めてきた。しかし『Reuters』など複数メディアの報道によると、2025年半ばにはAGI(汎用人工知能)の定義やその際の契約内容を巡る対立が表面化。関係の先行きが不透明になっていた。

 こうした緊張関係を経て、両社は2025年9月に次段階の提携に向けた基本合意(MOU)を発表。そして今回、その最終契約に至った。新たな契約は、両社の協力関係をこれまで以上に強固にし、長期的な安定性を確保するものとされる。

新契約のポイントは「IP権利延長」と「クラウドの柔軟性」

 今回の最終契約における主要なポイントは以下の通りだ。

  • IP権利の延長: Microsoftが持つOpenAIのIP利用権を2032年まで延長。AGI達成後の権利も含まれる
  • APIのAzure独占: OpenAIが提供するAPIサービスは、引き続き「Microsoft Azure」(以下、Azure)で独占的に提供される
  • 非API製品の柔軟性: APIを介さない製品については、OpenAIがAzure以外のクラウドプラットフォームを任意で利用できる
  • 追加投資と計算資源の確保: OpenAIは2500億ドル分のAzureサービスを購入する契約を締結。これにより、モデルの学習や推論に必要な計算資源の安定供給が期待される
  • ガバナンスの変更: AGIの実現が宣言された場合、その妥当性は独立した専門家パネルが検証する。また、MicrosoftがOpenAIの新規キャパシティに対する優先交渉権(ROFR)を持つ条項は撤廃された

 この契約により、Microsoftは「Microsoft 365 Copilot」などの自社製品にOpenAIの最新技術を統合し続ける権利を長期的に確保した。一方、OpenAIはAzureという強力なインフラ基盤を安定的に利用しつつ、一部製品では他のクラウドを選択できる自由度も手に入れた。

ユーザーへの影響は? 安定供給と選択肢の拡大に期待

 今回の合意は、両社のサービスのユーザーにも複数のメリットをもたらすと考えられる。

 第1に、サービスの安定性向上だ。今回の契約で「非API製品」に限ってでもマルチクラウド化が正式に認められたことで、OpenAIは計算資源の調達先をAzure以外にも広げられる。実際、既にOracle Cloud Infrastructure(OCI)Amazon Web Services(AWS)との提携が発表されている。これにより、ピークタイムのアクセス集中によるサービス停止といったリスクの低減が期待できる。また、OpenAIがAzureから2500億ドル分もの計算資源を追加購入する契約を結んだことも、ユーザーの安心材料の一つになり得る。

 第2に、長期的なロードマップの明確化だ。MicrosoftがMicrosoft 365 Copilotや「Azure OpenAI Service」などの自社製品においてOpenAIの技術を利用できる権利を2032年まで確保した。個々のサービスの存続が保証されたわけではないが、既に多くの企業で利用されているこれらのサービスのロードマップがある程度明確化したことで、企業は安心して中長期的なAI活用計画を立てやすくなる。

 一方で、APIがAzureに独占される構造は維持されるため、開発者は引き続きAzureのリージョンや運用方針に依存することになる。しかし、Google Cloudが「Vertex AI」で、AWSが「Amazon Bedrock」でそれぞれマルチモデル戦略を推進し、AnthropicやMetaなどの有力モデルを提供している。ユーザーは、特定のベンダーにロックインされることなく、用途やコストに応じて(OpenAIのモデル以外も含めた)最適なAIモデルとプラットフォームを使い分ける、という選択肢は広がっていきそうだ。

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