GitHubで複数社のAIエージェントを管理できるように AI時代の開発基盤「Agent HQ」とは何か:AIニュースピックアップ
GitHubは複数のAIエージェントを統合管理できる新機能「Agent HQ」を発表した。開発者はGitHubやVS Codeでエージェントを制御・計画に活用でき、企業はガバナンスや品質分析を統一的に実施できるようになる。
GitHubは2025年10月29日、開発者が複数のAIエージェントを統合的に操作できる新機能「Agent HQ」(エージェント本部)を発表した。Agent HQは「GitHub」プラットフォームの次の進化を示す取り組みとされ、複数のAIエージェントを一元的に管理し、開発者が自らのワークフローに組み込めるようにする。
複数のAIエージェントを統合する「Agent HQ」とは何者か
現在のAI開発環境では強力なAIツールが多数存在するが、それぞれが異なるインタフェースやシステムに分散しており、統一的な利用が難しい。この課題を解決するため、Agent HQはAIエージェントをGitHubの標準ワークフローに組み込み、既存のシステムと同等に機能させる構想を打ち出している。
Agent HQは、AnthropicやOpenAI、Google、Cognition、xAIなどの複数のコーディングエージェントを統合する。これらのエージェントは、今後数カ月以内に有料の「GitHub Copilot」サブスクリプションを通じてGitHubで利用できるようになる。既存の「Git」や「プルリクエスト」「Issue」「GitHub Actions」などの基本機能はそのまま維持され、エージェント導入で既存の開発体験が損なわれないよう配慮されている。
新たに導入される「ミッションコントロール」は、Agent HQの中核をなす機能だ。複数のAIエージェントを統合的に監督するためのコマンドセンターで、GitHubや「Visual Studio Code」(VS Code)、モバイル、CLIなどから一貫したインタフェースでアクセスできる。開発者はこの機能を使って、エージェントにタスクを割り当て、進捗を追跡し、結果を監視できる。エージェントが生成したコードのCI実行タイミングを細かく管理できる「ブランチコントロール機能」や、どのエージェントがどのタスクに関与したかを把握できる「アイデンティティー管理機能」なども備わる。「Atlassian Jira」や「Microsoft Teams」「Azure Boards」「Raycast」などに加えて、「Slack」や「Linear」とも連携できるようになる
VS CodeにもAgent HQ関連の新機能が組み込まれる。新たに追加されている「Plan」モードは、GitHub Copilotとの連携を強化する機能で、開発者がプロジェクトの計画段階からAIエージェントを活用できるようにする。このモードではタスクの構造化や段階的なアプローチの策定が可能で、コード作成前の段階で欠陥や決定の不足を発見できるよう設計されている。作成した計画はGitHub Copilotに送信され、ローカルまたはクラウドで実行される。
VS Codeでは「AGENTS.md」を使ってカスタムエージェントを定義できるようになっている。プロジェクトごとに明確なルールや動作ガードレールを設定でき、開発者が毎回同じ指示を入力する必要がなくなる。加えて、MCP(Model Context Protocol)レジストリへのアクセスもVS Code内で完結し、「Stripe」や「Figma」「Sentry」などの外部サービスをワンクリックで有効化できる。
組織管理者向けに、AIアクセスとガバナンスを統合管理するコントロールプレーンも提供する。エージェントの制御、モデルアクセス権限の定義、監査ログの取得、AI利用状況のメトリクス分析を単一のインタフェースで実施できる。GitHubは、企業がAIを安全かつ一貫性のある方法で運用できる体制を整えるとしている。
コード品質に関する新たな取り組みとして「GitHub Code Quality」も公開プレビューとして発表した。この機能は、リポジトリ全体の保守性、信頼性、テストカバレッジを分析し、改善につなげる仕組みを提供する。GitHub Copilotのレビュー工程にも改良が加えられ、エージェントがコードの初期レビューを実施し、問題点を事前に検出するようになる。
GitHubは、Copilotの利用状況を可視化する「Copilotメトリクスダッシュボード」も同時に発表した。組織全体におけるCopilotの影響や使用傾向を把握できるもので、AI導入の効果測定や改善に役立つという。
Agent HQはAIエージェントを安全に統合し、開発者が自らの方法で活用できる環境を整備する試みといえる。GitHubは今後も、既存のワークフローの信頼性を維持しつつ、AI時代に適応した開発体験の実現を目指すとしている。
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