Gemini APIにフルマネージドRAGツール「File Search Tool」登場 RAGシステム開発を効率化：AIニュースピックアップ

GoogleはGemini APIにフルマネージドRAGツール「File Search Tool」を導入した。データの検索から回答生成までを一貫して処理するための基盤を提供する。

[後藤大地，有限会社オングス]

　Googleは2025年11月6日（現地時間）、「Gemini API」に新機能「File Search Tool」を導入したと発表した。これは、RAG（検索拡張生成）システムをマネージド化したもので、データの検索から回答生成までを一貫して処理する仕組みだ。

「File Search Tool」でRAG開発はどう変わるか　仕組みと価格

　File Search Toolは「Gemini」の出力の信頼性や検証可能性を高めるために設計されている。Gemini APIクライアントでファイル検索ストアを作成し、ファイルをアップロードした後、「generate_content」実行時にツールとして指定することで利用できる。

　料金体系は以下の通りだ。

　ファイルの保存とクエリ時の埋め込み生成は無料だ。ファイルを初めてインデックス化する時の埋め込み生成に料金が発生する。料金は100万トークンあたり0.15ドルと定められており、使用する埋め込みモデル（発表時点では「gemini-embedding-001」）に基づく固定レートが適用される。

　File Search Toolはファイルの保存、最適な分割（チャンキング）、埋め込み生成、検索結果の動的注入といった一連のプロセスを自動化しており、開発者は既存の「generateContent」APIを通じて利用できる。最新のGemini埋め込みモデルによる高性能なベクトル検索機能を搭載し、ユーザーの問い合わせ内容の意味や文脈を理解して関連情報を抽出できる。

File Search Toolの動作の流れ（出典：Gemini APIのドキュメント）

　出力結果には自動的に引用情報が付与される。対応ファイル形式はPDFやDOCX、TXT、JSONの他、主要なプログラミング言語のファイルもサポートしている。

　Google AI StudioではこのFile Search Toolを利用したデモアプリケーションが公開されており、有料APIキーを使って動作を確認できる。

　早期アクセスプログラムに参加している開発者らは、既に同ツールを使ってさまざまなシステムを構築している。AI駆動型ゲーム生成プラットフォーム「Beam」を開発するPhaser Studioは、File Search Toolによって開発効率を高めているという。Beamでは6つのコーパスに分かれた約3000件のテンプレートデータを検索対象としており、同ツールが複数のデータ群を並列処理し、2秒以内に結果を統合できる仕組みを実現した。従来は手動で数時間かかっていた照合作業が、同機能によって短時間で完了する。

　Phaser StudioのCTO（最高情報責任者）リチャード・デイヴィー氏は、「File Search Toolを利用することで、ゲーム生成の工程を大幅に高速化できた。テンプレートやコードスニペット、設計指針などを即座に参照できるようになり、これまで数日かかっていた試作が数分で実行可能になった」と述べている。