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キーメッセージに謎の言葉「アンストッパブル」 タニウムのAI時代の新戦略を解き明かす「Converge 2025」現地レポート

Taniumは年次カンファレンス「Converge 2025」で従来の「The Power of Certainty」(確実性の力)からキーメッセージを刷新した。AIによる劇的な変化が生まれる中、IT・セキュリティ運用を同社はどのように変革するのか。

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 企業はAIの急速な進化により、かつてない複雑性と攻撃の規模という二重の課題に直面している。この状況下において、エンドポイント管理とセキュリティ運用の可視化・制御をリアルタイムで実現し、地位を築いてきたセキュリティベンダーがTaniumだ。同社は独自の高速分散アーキテクチャを強みとし、大規模な環境を持つグローバル企業や政府機関のIT・セキュリティ部門から高い信頼を獲得してきた。

 Taniumのこれまでの姿勢は、従来のキーメッセージ「The Power of Certainty」(確実性の力)に明確に表れていた。これはリアルタイムで得られる正確な可視性こそが、あらゆる意思決定の確実性を確保するという主張に基づいていた。

 しかし同社は2025年11月18日(現地時間)、米国オーランドで開催された年次カンファレンス「Converge 2025」において、キーメッセージを「Autonomous IT. Unstoppable Business.」(自律型IT ビジネスを止めない)に刷新すると発表した。これは単なるスローガンの変更ではなく同社にとっては大きなビジョン転換だ。

 Taniumが目指す「自律的なIT」が具体的に何を意味し、ServiceNowやMicrosoftといった大手パートナーとの戦略的連携を通じて、どのように「止められないビジネス」(Unstoppable business)を実現するのかを本稿では考察する。

メッセージを大転換 Taniumが示す「自律型IT」のビジョンに迫る

 Converge 2025の基調講演に登壇したTaniumのCEO、ダン・ストリートマン氏は、今日のIT・セキュリティ運用が直面する課題を、あらゆる組織が「止められない存在」(Unstoppable)でなければならないという社会からの要請として定義した。これは、障害や侵害を防ぐだけでなく、組織に急速なビジネス革新が求められていることを意味する。


Taniumのダン・ストリートマン氏(CEO)

 ストリートマン氏は「AIの進化がこの課題を劇的に深刻化させている」と指摘した。AIを利用した攻撃者は、前例のない規模とスピードで無差別に攻撃を仕掛け、ディープフェイクや自動化されたマルウェア生成といった手法で、企業のインフラストラクチャに攻撃を仕掛けているという。

 Taniumはこの進化する脅威に対応するため、これまでの「確実性の力」を土台としつつ、さらに一歩踏み込んだ「自律的なIT」(Autonomous IT)へとビジョンを進化させた。同氏によると、「Tanium」プラットフォームは長年にわたり、数百万のエンドポイントにおけるリアルタイムの可視性と制御能力を提供することで、顧客のチームが混乱を超越し、どんな攻撃者よりも速く、正確に対応できるよう支援してきた実績があるという。

 「さらに、Taniumプラットフォームは従来の『自律的なエンドポイント管理』の概念を超え、エージェンティックAIに支えられた単一の管理画面、すなわち一つのコントロールプレーンへと進化している。これにより、セキュリティリーダーやIT運用リーダーはインフラストラクチャのあらゆる側面を見て、制御し、インサイトを収集し、リスクを予測し、暴露に対処しながら、セキュリティ運用を完璧に管理できるようになる。これこそが、Taniumが定義する『自律的なIT』の具体的な姿だ」(ストリートマン氏)

 Taniumの「自律的なIT」は、3つの重要な価値を通じて顧客に提供されるという。第一に、リアルタイムでのインテリジェンスを提供する。第二に自社環境だけでなく、世界中の何百万ものエンドポイントからのインテリジェンスに基づいて、信頼できるリスクスコアリングを提供する。第三に数秒での迅速な修復、復元における信頼性だ。なお、このビジョンに伴い、製品名も「Tanium Autonomous Endpoint Management」から「Tanium Autonomous IT」へとリネームした。

 講演では、顧客事例として米国の自動車小売業者AutoNationがランサムウェア攻撃時にTaniumのリアルタイムスキャンによって侵害の痕跡がないことを迅速に確認した例や、SAPが複雑なグローバル環境全体でエンドポイントの可視性を確保し、自動化によりチームのリソースを解放した例が紹介された。

 ストリートマン氏は今後、Taniumプラットフォームの適用範囲をOT(運用技術)デバイスやモバイルデバイスにまで拡張し、エンドポイントからOTまで攻撃対象領域全体を保護する機能強化を進めていることも明らかにした。

「ノー(No)からノウ(Know/知る)」に SailPointのTanium導入事例

 ストリートマンCEOに続いて登壇したアイデンティティー・セキュリティ企業SailPointのCIO(最高情報責任者)、スリーヴェニ・カンチャルラ氏は、自社のセキュリティ対策の強化に向けてTaniumプラットフォームを活用した事例を話した。

 カンチャルラ氏はAIの進化によって「マシン・アイデンティティー」といった新たなアイデンティティーが重要になり、攻撃対象領域が拡大していると指摘する。この変革の中でTaniumとのパートナーシップが重要な役割を果たし、特に端末の脆弱(ぜいじゃく)性管理や資産追跡といった領域で大きな効率化をもたらしたという。


SailPointのスリーヴェニ・カンチャルラ氏(CIO)

 Taniumによる自動化はエンジニアリングチームが優先しないパッチ適用などの課題を解決したという。カンチャルラ氏は「私のチームは今やより速くなり、より良いことに集中できるようになった。TaniumがITチームとセキュリティチームのサイロを打ち破り、セキュリティチームを単なる『ノー(No)の部門』」から可視性を確保してビジネスを支援する『ノウ(Know/知る)の部門』へと変貌させる上で重要な役割を果たした」と結論付けた。

自律型ITを支えるMicrosoftとServiceNow 協業の成果とは?

 Taniumが掲げる「自律的なIT」は、単一のベンダーで完結するものではなく、エンタープライズの主要なプラットフォームとの統合を通じて実現される。基調講演では、セキュリティとIT運用管理(ITSM)における二大戦略的パートナーであるMicrosoftとServiceNowとの連携強化が強調された。

Copilot for Securityとの連携で実現する次世代のSOC運用

 MicrosoftのCVP Security Solutionsであるスティーヴ・ディスペンサ氏は、Taniumが3年連続でMicrosoftの年間最優秀パートナー賞を受賞したことに触れ、連携の重要性を強調した。


Microsoftのスティーヴ・ディスペンサ氏(CVP Security Solutions)

 TaniumとMicrosoftの協業の真の価値は、Taniumのリアルタイムの可視性とMicrosoftのエンタープライズクラスのセキュリティ対策の組み合わせにあるという。

 例えばTanium Autonomous ITはリアルタイムインテリジェンスを供給することで、Microsoftの生成AIサービス「Microsoft Copilot for Security」を強化し、SOCチームの迅速な意思決定を可能にする。この他、Taniumはリアルタイムのエンドポイントテレメトリーを「Microsoft Sentinel」にストリーミングし、大規模な統合修復のためのライブ脅威ハンティングを実現している。

 顧客事例では、Best Buyが毎日25TBものデータをTaniumストリームからMicrosoft Sentinelに取り込み、このデータ基盤がAI時代における自律的な対応に不可欠であると強調した。また、McDonald’sは100カ国、100万以上のエンドポイントという大規模環境においてTaniumによる「一貫性」と自律的な行動能力が、ダウンタイムを最小限に抑え、ビジネスを止めない基盤になっていると説明した。

ServiceNowの神経系として機能するTanium

 ServiceNowのサンカ・ナグチョウドゥリー氏(SVP Digital Business Services and Experiences)は、ServiceNow自身も「100%の自律的なIT」を目指し、既に「ゼロ・サービスデスク」を実現していると明言し、リアルタイムインサイトがなければこれが実現できないとしてTaniumがその鍵を握ると述べた。


ServiceNowのサンカ・ナグチョウドゥリー氏(SVP Digital Business Services and Experiences)

 Tanium Autonomous ITはServiceNowに埋め込まれ、ワークフローに組み込まれることで、ServiceNowの脳に対する「神経系」として機能して「エージェンティックAI」による自律的な行動を可能にしている。

 顧客事例としてTP(Teleperformance)は、ServiceNowの仮想エージェントとTaniumの連携により、「Microsoft Teams」のクラッシュといったインシデント対応をサービスデスク担当者が関与することなく自律的に解決するフローを構築した。また、UKGはTaniumのリアルタイムデータとServiceNowのワークフローを活用することで、インシデント管理において前年比で47%の削減を達成したことを報告し、この成果が同社の「自律的なIT」への焦点を深めることを可能にしたと述べた。

ビジョンの変遷とTaniumが目指す「止められないビジネス」

 TaniumがConverge 2025で提示した「Autonomous IT. Unstoppable Business.」というキーメッセージは、同社が顧客の「止められないビジネス」の実現を支えるパートナーであり続けるという強いコミットメントを表現するとともに、AI駆動の脅威がもたらすスピードと規模に対応するため、可視性に加えて自律的な実行能力をシステム全体に組み込むという、エンタープライズITの構造的変革を要求するものだ。

 サイバー攻撃者がAIを悪用し、攻撃の質と量が増大している現状に対し、もはや確実性の追求だけでは防御が追い付かない。Taniumはインフラストラクチャ全体が自ら問題に対処し、止まることなく稼働し続ける「自律的なIT」の構築こそが、企業の存続と競争力の維持に不可欠であるという、ビジョン転換を打ち出したといえるだろう。

 Taniumのリアルタイムデータと実行能力はServiceNowやMicrosoft Sentinelといった上位のワークフロー・オーケストレーションプラットフォームと統合されることで、インシデントの予知・検知から修復までを人間の介入なしに実行可能とするインテリジェントな“神経系”として機能している。

 これによってIT運用管理とセキュリティ運用の連携がどう進むかに期待が高まる。


「Autonomous IT. Unstoppable Business.」は同社の顧客への強いコミットメントを表現している(出典:Tanium発表資料)

(取材協力:Tanium合同会社)

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