SnowflakeとNVIDIAの提携強化が何が変わるか GPU統合ML基盤の威力:AIニュースピックアップ
SnowflakeはNVIDIAとの協業を拡大し、自社のAI Data CloudにGPU処理をネイティブ統合した。CUDA-X系ライブラリを実装し、既存のPythonワークフローでGPUアクセラレーションを活用できる環境を提供する。
Snowflakeは2025年11月18日(現地時間)、NVIDIAと機械学習(ML)分野での連携を強化し、自社クラウド基盤「AI Data Cloud」でGPUを活用したML処理をネイティブに実行できるようになったと公表した。Snowflakeの機械学習環境「Snowflake ML」にNVIDIAのCUDA-X系ライブラリの一部がプリインストールされる。データサイエンティストは既存のPythonワークフローを保ったままGPUアクセラレーションの恩恵が受けられるようになる。
SnowflakeにNVIDIA CUDA-X統合で何が変わるか
今回の統合によって、Snowflake MLにはNVIDIAが提供する「cuML」および「cuDF」の各ライブラリが組み込まれる。
両ライブラリーは「CUDA-X Data Science」エコシステムを構成する要素で、「scikit-learn」や「pandas」「UMAP」「HDBSCAN」など主要フレームワークに対応するGPU加速アルゴリズムを含む。利用者はコードを修正せず、既存の分析手法を大規模データに適用できるようになる。
Snowflakeプロダクト担当エグゼクティブバイスプレジデントのクリスチャン・クライナーマン氏は、今回の連携が同社の掲げる安全性、利便性、性能の向上につながると説明している。CUDA-Xライブラリのネイティブ統合により、処理性能の向上だけでなく、基盤管理作業の負荷軽減を通じて分析作業そのものへ注力できる環境を提供するとしている。
企業が扱うデータ量の増大を背景に、GPU活用は生産性確保とコスト管理の観点から重要性が高まっている。NVIDIAが「NVIDIA A10 GPU」で実行したベンチマークテストの結果によれば、Random ForestではCPU比で約5倍、HDBSCANでは最大200倍の高速化が確認された。Snowflake MLでこれらのライブラリを利用することで、学習工程や前処理工程の短縮が期待できる。
今回の統合は「Snowflake Container Runtime」を通じて提供される。これは大規模ML用に整備されている実行環境であり、CUDA-X Data Scienceエコシステムのオープンソースライブラリ群へ直接アクセスできる。用途として、数百万件規模のレビューデータを扱う大規模トピックモデリングや、高次元配列を分析する計算ゲノミクス分野の分類処理などが挙げられている。
NVIDIA戦略的エンタープライズパートナーシップ担当バイスプレジデントのパット・リー氏は、データを価値ある知見へ変換する基盤として加速計算の役割を指摘している。
SnowflakeとNVIDIAは生成AI機能の基盤整備でも協調関係を続けてきた実績がある。今回の取り組みは、SnowflakeがデータウェアハウスからAIコンピュート基盤に進化する上で重要な一歩になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Microsoft 365 Copilot、ついに“エージェント化” ExcelやWordで複雑なタスクを段階的に処理する新機能
Microsoftは、Microsoft 365 Copilotの新機能「Agent Mode」と「Office Agent」を発表した。ExcelやWordなどのOfficeアプリでAIと対話的に協働し、複雑な業務を段階的に処理・完成できる。
“AIエージェントの次”のトレンドは何か Gartnerが描く未来志向型インフラのハイプ・サイクル
Gartnerは、日本の未来志向型インフラ・テクノロジーに関するハイプ・サイクルを発表した。AIエージェントや完全自動化など9項目を新たに加え、2030年を目標とした産業変革の指針を提示している。
生成AI、進化の鍵を握る「長期思考」 Sakana AIが挑む“人間のように試行錯誤するAI”への道筋
AIの進化は目覚ましく、その活用は日々広がっている。しかし、現在のAIにはまだ苦手な分野がある。それは数週間といった「長期間の思考」を要する複雑なタスクだ。この難題にAI研究の最前線はどう挑んでいるのか。Sakana AIの秋葉拓哉氏に話を聞いた。