「AGIは3年後、ASIは4年後」 進化するAIに仕事を任せるための運用設計:2026年、AI活用の現実解
AGI誕生が3年後に迫る中、AI活用の競争軸は「性能」から「運用設計」へと移行した。AIに長時間業務を安心して任せるための戦略とは。AI活用の成否を分ける設計の要諦を探る。
「AGI(汎用人工知能)は3年後、ASI(人工超知能)は4年後には誕生するかもしれない」。こう語るのは、AI insideの代表取締役社長CEOの渡久地択氏だ。AIが人の業務を十分に代替できる性能を手に入れた時、企業が安心して仕事をAIに任せられるようにするために必要な、新たな設計思想とは何か。
AIがさらに賢く、長く働けるように
渡久地氏はAIの進化を支える3つの要素として「計算リソース」「アルゴリズム」「データ量」を挙げた。過去4年間で計算リソースは約100倍、アルゴリズムの効率も1年で約3.16倍に向上しており(つまり、同等性能に必要な計算リソースが減っており)、これらを掛け合わせると4年間で1万倍の性能向上が見込まれるという。
「この予測は昨年(2025年)までのデータを基にしているので、3年後には1万倍の性能のAIが出ていることになります。これはもうAGIと言ってよいでしょう。さらにその後、10万倍の性能を持つASIが世界の課題を解決する時代に入ります」(渡久地氏)
つまり、今後数年で人間と同じ土俵で仕事をするAIが現れ、そこから間もなくAIが世界規模の問題解決に取り組む時代が到来する。ただ、1度のアウトプットにおける性能が上がっただけでは、生産性への効果は限定的だ。AIに人間の仕事を任せるには、モデルが自律的に長時間働く性能も上げる必要がある。
「2019年から2024年にかけて、AIが自律的に働ける時間は7カ月ごとに倍増しました。2024年以降は4カ月ごとに加速しています。このトレンドが続くと、1〜2年で数日から2週間程度の仕事をAIが自律的にこなせるようになります」(渡久地氏)
同氏はこれらのトレンドを踏まえ、「AIの能力が高いか低いかという議論はもう終わりました。モデル性能から、『安心して任せられる運用』に競争軸が移っています」と指摘する。高性能なAIを人間がどう制御するか。その設計が、企業の今後数年の“勝負どころ”になる。
「安心してAIに任せられる運用」をどう実現するか
では、AIに長時間の業務を任せるために、企業は何をすべきか。渡久地氏は「運用設計」と「任せ方の設計、つまりAIと人間の責任分界の設計」が重要だと強調した。
現在はモデルやサービスの性能競争が続いているため、企業がAIを導入する際に「どのモデルやサービスを使うか」が論点になりやすい。しかし、先述したようにAIが長く働けるようになると、人間の望み通りに動いているか監視、評価し、その結果を基にAIを制御する仕組みが重要になる。
"責任設計"も重要だ。AIに任せた業務がストップした場合に「AIがやったから」という言い訳は通用しない。どこまでAIに任せて、人間はどこで介入し、ミスの是正責任を誰が取るか。これらの設計があいまいだと、AIの本番運用が進められないという。同氏はこの設計を実現するための4つのステップを提示した。
ステップ1は「目的を決める」ことだ。AIに何をさせるのか、何のための業務なのかを明確に定義する。例えば、「顧客からの問い合わせに対してヒアリングを行い、見積もりを作成する」といった具体的な目的を設定する。
ステップ2は「任せる範囲を決める」ことだ。「100万円以下の見積もりはAIに任せるが、それ以上は人間が対応する」「一定の条件を超えたら人間に確認を取る」といった分岐点を事前に設計しておく。
ステップ3は「実行」で、この部分はAIが担当する。ステップ4は「是正とルールの更新」で、事後的に問題があった場合の対応や、設計そのものの改善は人間が行う。
「この設計がないと、AIが間違えた時に何がいけなかったのかが分からない。目的の設定ミスなのか、範囲の設計ミスなのか、モデル性能の問題なのか。4つに分類することで、どこで問題が起きたかを特定し、改善できるようになります」(渡久地氏)
では、これからAI活用を始める企業が取るべきアクションは何か。渡久地氏は「これまであまりやってこなかった企業は、逆に有利かもしれません」と指摘する。
「過去のやり方にとらわれず、ゼロから業務を組み直せるからです。人間がやってきたことをAIで効率化するのではなく、AIがやりやすいようにわれわれが合わせてあげることが大事です」(渡久地氏)
AI活用が進む4つの分野
2026年、AI活用が特に進む分野として、渡久地氏は「金融・保険」「物流」「バックオフィス」「行政・社会インフラ」の4つを挙げた。
金融・保険分野では、反社チェックやアンチマネーロンダリングの一次判断、支払い審査などのモニタリング業務でAIによる効率化が進む。人手不足かつ高頻度の業務であり、最終判断は人間が担うため責任分界を設計しやすいからだ。
物流分野では、倉庫内オペレーションや保全業務がAI活用の対象となりやすい。「人が集まらない」「夜間の連続稼働が必要」といった課題に対して、長時間働けるAIの特性が生きる。
バックオフィス業務は元々構造化されており、AIを適用しやすい土壌が整っている。
行政・社会インフラ分野では、各種審査申請の一次判断やインフラ点検などがAI適用の対象になりやすい。「社会の維持のために導入しなければならないという認識になりつつある」と渡久地氏は指摘した。
渡久地氏は2026年を「チャットからワークへ」という流れが加速する年だとした。AIを“単なるチャット相手”から“優秀な同僚”に変えられるか。「責任設計」と「業務の再構築」にいち早く着手できるかどうかが、AI導入プロジェクトの成否を分けることになりそうだ。
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