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“運用8割”のIT予算から脱却するには? 攻めのITを取り戻す「運用DX」実践術

IT予算の多くを運用保守に費やしている国内企業。この守りの構造から脱却し、攻めに転じる方法とは。自動化技術を駆使して運用業務からIT人材を解放し、新たな価値創出に振り向ける「運用DX」の神髄に迫る。

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 “攻めのIT”への転換が叫ばれて久しい。しかし、既存システムの維持や管理に膨大なリソースを投下して、新たな価値創出への投資が滞っている日本企業が後を絶たない。DX(デジタルトランスフォーメーション)の大号令下で進むモダナイゼーション(システム刷新)は、この膠着(こうちゃく)状態を打破する切り札となるはずだった。ところが、現実はそう単純ではない。

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NECの吉田功一氏(プラットフォームSIサービス統括部 シニアマネージャー)

 「過去数十年にわたって構築してきた膨大なレガシーシステムの全てを一度に作り直すのは現実的ではありません。残されたシステムの運用負荷をいかに低減するかにも目を向けることが重要です」――NECの吉田功一氏は、企業が直面する課題をこう分析する。同氏によると、レガシーシステムの刷新に成功した企業は一部にとどまるという。大半は、従来のまま取り残されていることになる。

 モダナイゼーションの一環としてシステムをクラウドサービスに移せたとしても、運用プロセスが変わらなければ本質的な解決にならず、IT人材が運用保守に張り付く体制が残ってしまう。NECの調査(2021〜2025年)によると、国内企業のIT予算は大半が運用保守に充てられ、いわゆる「運用8割、新規開発(戦略)2割」といわれる構造が固定化していることがうかがえる。IT予算のうち「一定の規模を占めるのが人件費」と吉田氏が指摘するように、予算も人材も“運用偏重”になっている実態がある。

 ビジネス環境が激変する今日、投資の8割を守りに費やす構造は、企業の競争力の足かせとなる。経営者には、この構造の変革が求められている。

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IT投資を適切に振り分ければビジネスを加速させられる(提供:NEC)《クリックで拡大》

高止まりする運用負荷の正体は「障害対応」

 運用負荷は、なぜ下がらないのか。企業は何らかの形で自動化を進めているものの「その適用範囲に偏りがあることが原因です」と吉田氏は指摘する。同氏によると、バックアップのような定型作業の多くは自動化されている。ところが現場の負荷が最も高い「障害検知・通報」「障害からの復旧」といった領域は、人海戦術が依然として主流だという。

 定型作業を自動化していても、障害が起きたら人が駆け付け、ログを読み、判断し、コマンドを入力しなければならない──。「人がやるしかない」と聖域化されてきた領域にメスを入れない限り、負荷の抜本的な軽減は難しい。目先のツール導入で取り繕うのではなく、運用負荷の根本的な原因を断つ必要がある。

NECが実践したコスト構造の変革方法とは

 「運用の効率化は『人減らし』ではありません」と吉田氏は強調する。NECが自動化技術による効率化のゴールとして見据えるのは、コスト削減の先にある「人材のシフト」だ。「自社システムや事業に精通したエンジニアを運用から解放し、ビジネスを成長させる新しい開発業務にシフトさせる。それができれば、大きな武器になります」と同氏は語る。

 この言葉を裏付けるのが「クライアントゼロ」と呼ばれる取り組みだ。「NEC自身が最初の顧客となる」という考えで、新しい技術や製品を使い倒して得た知見を顧客に還元する。同社は、自社内の大規模なシステム運用の変革に成功した。 かつて「運用7割、戦略3割」だったIT支出割合を、徹底した標準化と自動化によって「運用4.5割、戦略5.5割」に逆転させた。捻出したリソースをDX推進にシフトし、企業競争力を高める土台を築き上げたのだ。

運用DXを網羅する4つの改善シナリオ

 NECは、クライアントゼロの実践によって得られたノウハウを体系化し、顧客の経営課題の解決に寄与する価値創造モデルとして「BluStellar」(ブルーステラ)を提案している。BluStellarは企業のビジネスモデル変革を広範にカバーしており、その一部を成す「運用DX」のシナリオとして次の4つを用意している。

  1. 運用標準化/自動化:運用プロセスの標準化と作業の自動化を組み合わせて、属人化の解消と業務効率化を実現する
  2. 資産管理/脆弱(ぜいじゃく)性管理の自動化:構成管理や脆弱性対応を自動化し、セキュリティリスクの低減とガバナンス強化を図る
  3. インシデント管理の高度化:障害検知から通報、復旧までのプロセスを自動化、高度化する
  4. 可視化:経営層から現場まで、システムの稼働状況や障害情報をリアルタイムにダッシュボードで共有する
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クライアントゼロを参考にした、金融機関における運用DXの事例(提供:NEC)《クリックで拡大》

 吉田氏は、1つ目の運用標準化/自動化を運用DXの要に位置付け、「ここを飛ばして他の施策に手を付けても、砂上の楼閣になりかねません」と断言する。NECが支援してきたプロジェクトのほとんどは、運用標準化/自動化からスタートしている。

標準化と自動化の“隙間”を埋めるOSS「Exastro」

 運用DXを具体化する手段として、NECはグローバル標準のツールを利用する。同社が採用しているのが、業務プロセスの標準化を担う「ServiceNow」と作業の自動実行を担う「Red Hat Ansible Automation Platform」(以下、Ansible)だ。ServiceNowは人やプロセスを一元管理し、Ansibleは作業を正確に実行するエンジンになる。

 ただし、ServiceNowとAnsibleだけでは理想的な自動化は難しい。2つのツールの間にある“隙間”をどのように埋めるのか、という問題がある。

 ServiceNowに複雑な条件分岐や判断ロジックを組み込むと、ワークフローが複雑化してメンテナンスが困難になる。Ansibleの「Playbook」(自動化コード)に判断条件を細かく記述すると、類似したPlaybookが乱立して管理が破綻する。「両者の間にある『運用の判断』『処理の組み立て』を担う仕組みが必要です」と吉田氏は説明する。

 この隙間を埋めるのが、NECが開発してオープンソースソフトウェア(OSS)として公開している「Exastro」(エグザストロ)であり、以下の中核機能がある。

  • 判断:監視ツールからのアラートに代表される各種データを分析し、既知/未知の判定や対処の要否を判断。ベテラン運用者の頭の中にある判断ロジックを形式知化し、再現可能にする
  • 組み立て:判断結果に基づき、汎用(はんよう)化されたIaC(Infrastructure as Code)部品とパラメーターを組み合わせて、Ansibleに渡すジョブを生成する

 ベテラン運用者の頭の中にある「このアラートが出たら、この手順で、このパラメーターを使って復旧する」といった判断ロジックをExastroがデジタル化する。これにより、システムに障害が起きた際に運用担当者が個別の専用スクリプトを書く必要がなく、IaC部品の組み合わせで迅速に復旧できる。

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Exastroは、ServiceNowとAnsibleの“隙間”を埋める(提供:NEC)《クリックで拡大》

 Exastroが商用製品ではなくOSSであることも重要なポイントだ。マルチベンダー採用が当たり前になる中、「マルチベンダーの環境で効果的に成果を出すためには、特定ベンダーに依存せずオープンな技術でつなぐ“器”が必要です」と吉田氏は語る。その器として、NECの知見とノウハウを詰め込んだExastroをあえてOSSとして公開し、ベンダーの垣根を越えて利用できるようにした。

大手金融機関が運用DXでコストを6割削減

 運用DXで目覚ましい成果を挙げた企業が登場している。ある大手金融機関は、NECの取り組みを参考にExastroとServiceNow、Ansibleを組み合わせた運用基盤を構築した。ServiceNowを窓口とし、Exastroが判断と組み立て、Ansibleが実行という役割分担を徹底することで開発、基盤、運用の3部門にまたがる業務プロセスを統合。従来は人が判断していた障害対応などの非定型業務まで自動化した。

 同金融機関は、運用DXによって構築や運用保守のコストを5年間で6割、金額にして約5.7億円を削減できると見込む。こうして生まれた余力を新サービス開発などの“攻めのIT”に投資しようとしている。「運用DXのあるべき姿を体現されています」と吉田氏は評価する。

 NECもクライアントゼロの取り組みを継続している。同社の生体認証サービス群「Bio-Idiom」は従来、サービスの申し込み受け付けから環境構築、提供開始までのプロセスに人による確認や設定が介在し、数日のリードタイムを要していた。Exastroを中核とした運用DXを実践してプロセスを自動化し、リードタイムを10〜20分程度に短縮。運用DXによって浮いた人材リソースを、新たなサービスの開発など戦略的な投資に振り向けられているという。

AIとの融合で運用DXをさらに加速

 Exastroの進化は続く。NECは、生成AI(LLM)を活用した運用の高度化を計画している。AnsibleのPlaybook生成を支援する機能やルールベースでは判断できない未知の事象に対する原因分析、対処案の提示機能に生成AIを生かす計画だ。同社が開発したハルシネーション抑制機能を活用し、信頼性の高い運用支援の実現を目指す。

 「人材不足で新しいことができない」と嘆く企業に、吉田氏は「優秀な人材は既に社内にいます」と言い切る。彼らは日々の運用に縛られ、身動きが取れなくなっているだけだ。そうした人材を解放して新たな場所で輝かせられるかどうかは、経営者の意思決定に懸かっている。

 自身が成果を実証した運用DXの仕組みにより、国内企業がシステム運用の効率性を高め、生まれた余力で新たなビジネス価値を創造する──。その変革の道のりを「NECは全力で伴走して支援します」と吉田氏は力を込める。

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